ウィーン=ベルリン ブラス・クインテット

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打ち合わせを2件ハシゴした後、渋谷でウィーン=ベルリン ブラス・クインテットの公演へ。「エヴァルトの2番」「ミュージックホール」「子供のサーカス」など、演目もド直球の公演は久しぶりかも。
とはいえ、演奏はド直球ではなかった。「ドビュッシー・4つの前奏曲より」と「エヴァルトの2番」はトロンボーン奏者のマーク・ガールがカイザーバリトンを使用しての演奏。前者はサクソルンバス、後者はテナーホーン(バリトン)を意識しての楽器選択と思われ、演奏する曲目に対する理解と「ヒストリカル・アプローチをモダン楽器でどう表現するか」という実験の端緒が見られ素敵でした。私的趣味目線でいうと、ホルンもオーバルのアルトホルンに持ち替えてくれるとさらに悶絶モノでした。
「ミュージックホール」と「子供のサーカス」は、内容がカブるので一度にセレクトされる機会も少ないのだけど、どこまでも軽妙洒脱な英国サウンドのホロヴィッツと、珍妙かつ物悲しさも垣間見える真ん中から東のヨーロッパサウンドのクーツィールの対比が面白かった。
モダンではあるけど、地勢的な背景を知ると、このアンサンブルのサウンド感の(民族)文化的な深みが分かってくる。トーマス・ガンシュ(ムノツィルブラスのラッパのおじさん)の面白ヘンテコ曲も演奏したのだけど、オーストリア周辺のブラスアンサンブルというのは、ビアホール・ブラスバンドやバルカン・ブラスバンドが下地としてスピリットに染み込んでいるので、自ずとそういうサウンド感になる(しかも最近はそういったバンドでべらぼうに上手いところがワンサカある)。
 
ロビーや客席で音大生と思われる子たちが「楽器が」「音色が」「音程が」「音抜けが」と表面的・技巧的(で多少トンチンカン)なウンチクを得意げに口々に披露していたんだけど、もっと色んなスタイルの演奏を聴き、一見音楽とは関係ない地理や歴史や文化の勉強もしないと、西欧という異文化を理解・表現することは難しいですよ〜と、おいちゃんは思ったのでした。