クラシカル・プレイヤーズ東京(鑑賞編)

先々日の「クラシカル・プレイヤーズ東京 室内楽演奏会シリーズ」ですが、実に興味深い鑑賞体験の連続でした。
こういったラインナップです。(以下、東京芸術劇場のWEBサイトより転載)

クラシカル・プレイヤーズ東京 室内楽演奏会シリーズ vol.5
『ピリオド楽器による大作曲家の管楽合奏作品』
2015年11月05日(木)19:00〜
東京芸術劇場コンサートホール・エントランス
 
A.ドヴォルザーク /
4本のトランペットとティンパニのためのファンファーレ B.167
~1891年のプラハ万国博覧会のオープニングのために~
 
L.v. ベートーヴェン/
4本のトロンボーンのためのエクワーレWoO 30
I. Andante – II. Poco Adagio – III. Poco Sostenuto
 
A.ブルックナー/
3本のトロンボーンのための2つのエクワーレ
 I.Lento II.Grave
 
L.マウラー/
2本のコルネット、2本のホルン、トロンボーンのための12の小品より第1曲~第4曲
 1.Maestoso alla Marcia 2.Andante con moto 3.Allegro grazioso 4.Vivace
 
編曲者不詳/
モーツァルトのオペラ《魔笛》から2本のフルートのための二重奏曲
1. Der Vogelfänger bin ich ja (おれは鳥刺し)
2. Du feines Täubchen, nur herein!(可愛い子よ、お入りなさい)
3. Wie stark ist nicht dein Zauberton(なんと不思議な笛の音)
4. Ach, ich fühl's, es ist verschwunden(あぁ、私にはわかる、消え失せてしまったことが)
5. Ein Mädchen oder Weibchen (娘っ子か、可愛い女房が)
 
W.A.モーツァルト/A.E.ミュラー編/
フルート・ソロのための《お気に入りの主題と変奏曲》 (1800年頃)
(ピアノ協奏曲 第17番 K.453〜第3楽章の〈ムクドリ〉主題)
 
W.A.モーツァルト/
2本のフルートと5本のトランペット、ティンパニのための
ディヴェルティメント第6番ハ長調 K.188
No.1 Andante - No.2 Allegro – No.3 Menuetto – No.4 Andante – No.5 Menuetto – No.6
 
【出演】
お話:佐伯茂樹(クラシカル・プレイヤーズ東京 トロンボーン奏者)
フルート:有田正広、吉崎恭佳
トランペット:斎藤秀範、金城和美、狩野藍美、相馬伸恵
トロンボーン:佐伯茂樹、廣田純一、鳥塚心輔、菅原薫
ティンパニ:井手上達

 
ドヴォルザークのファンファーレは、なんとナチュラルトランペットの作品。ドヴォルザークの当時にもまだ、プラハでは習慣としてナチュラルとティンパニによる典礼演奏が存続していたという佐伯茂樹さんの解説に、民族音楽としての西洋音楽の繋がりを感じずにはいられませんでした。
 
ベートーヴェンとブルックナーのエクアールに関しても、ヒストリカルトロンボーンによる演奏の味わい深さもさることながら、作曲の経緯と、なぜエクアールは和音を安定させないのか、またはオーケストラ曲におけるトロンボーンのコラール演奏の意味などを佐伯さんが詳しい解説を加えてくださりさらに意義深いものに。
 
マウラーの五重奏曲は、コルネット2本・オーバルのアルトホルン&バリトンホルン・ヴァルブトロンボーンという組み合わせ。佐伯さんが前々から仰られていた編成の実演が聴けたのは大変嬉しいものでしたし、普段のモダンではトランペット2・ホルン・トロンボーン・テューバでリッチなサウンドで演奏しがちなところを、もっとライトにコンパクトな編成で演奏した方がより室内楽的な上品で軽いサウンドになる(たとえば、モダンでも、コルネット2・アルトホルンorフレンチホルン・バリトンorユーフォニアム・テナーバスorバストロンボーンで演奏しても良いサウンドが得られる)というサゼスチョンになったのではないかと思います。
 
モーツァルトの魔笛のデュエットは、モダンフルートでも定番のレパートリーですが、これを有田正広さんと吉崎恭佳さんのフラウト・トラヴェルソで聴くことが出来たのは大きな幸せでした。
 
フルート・ソロのための《お気に入りの主題と変奏曲》 にいたっては、有田さんのソロ(無伴奏)です。多少次回の演奏会の宣伝という意味もありましたが、それでも、フラウト・トラヴェルソによる極上の音楽は素晴らしいの一言。
 
「2本のフルートと5本のトランペット、ティンパニのためのディヴェルティメント第6番 ハ長調 K.188」は実は初めて聴きました。PJBEに録音されていたのは、この一つ前のK.187で実はレオポルドの作品とのこと。いわゆる「エルヴェ・ニケ的」な耳で聴く演奏でしたが、大変興味深いものになりました。
 
こういう音楽体験が日本のプレーヤーによって可能のなっているのは美的と知的な欲求が満たされて実に愉しいです。