専門的な内容をイラストレーターさんへの依頼する場合

どんなに素敵なタッチと感性をお持ちのイラストレーターさんであっても、その方が普段興味を持たれていないジャンルの描写を誤ることって結構ありまして、依頼する側がそれをチェックする知見を持ち合わせていないと、結果的にクオリティが低いプロダクトのままブラッシュアップされてしまい、依頼側にとってもイラストレーターさんにとってもマイナス以外のナニモノでもありません。

僕は音楽関連のデザインワークではかなり専門的な領域まで突っ込まれても大丈夫な方なだけに、巷に溢れる残念な結果のビジュアルについつい目が入ってしまうのですが、それがまだ、結果的に表現されているモノが、街の賑わいの風景の一部だったり、音楽とはダイレクトな接点のない客層に向けたものである場合は、音楽が好きな人にとって「ちょっと残念」なだけで、それほど問題ではない訳です。でも音楽の専門書や、コアなファンに向けた公演であったりする場合は、実にヤヴァイ。

僕は理工学系の書籍のデザインも割と依頼されるのですが、どこかでいつも「コイツ分かってねーな」と残念な目で見られてるかもと、ビジュアル制作やイラスト依頼には結構ヒヤヒヤしながら制作しています。幸いにして担当編集の方が細かくサポートしてくださるので何とかやっていけてます。

勿論その知見をイラストレーター側が持ち合わせているのは理想なのですが、美術・音楽・文学・映画演劇・漫画・アニメ・スポーツ・アウトドア・自然科学・医学・理工学・社会学・政治・料理・語学〜何でもござれの引き出しの多い方なんてそうそういらっしゃりませんし、それを求める依頼者は自分に博覧強記な才でもない限り贅沢な考えです。

となると、ある特殊な描写が必要となるイラストレーションをお願いする場合には

(1)そのジャンルに長けたイラストレーターを常に複数確保しておき依頼する。

(2)依頼主が細かく資料を提供し、責任を持ってイラストレーターをサポートする。

の2通りしかない訳です。

勿論それぞれにおいてメリット・デメリットがあります。(1)の場合は表現における失敗は少ないものの、タッチの新陳代謝が悪いので見飽きてしまう・競合も同じイラストレーターを使ってくるので代わり映えがしなくなる、ということ。(2)の場合は常に最新の流行のタッチやセンスを追えるものの、注意を払っていても誤った表現をしてしまうリスクが高い、ということ。

理想はこの(1)(2)を上手に使い分けながらプロダクトを制作していくことなんですが、現実は予算やスケジュールや担当の無気力を理由に、手近なイラストレーターに安価で丸投げしてトラブルになってしまうケースが多々見られます。

こう入った質の悪いプロダクトをロールアウトし、ユーザーからの評判が悪買った場合、真っ先に槍玉に挙げられ評判を落とすのは制作担当ではなくビジュアルを担当したイラストレーターさんたちです。

専門的な内容をイラストレーターさんに依頼する時に思い出していたければと思います。