楽譜の装丁

 
風の音さんの新シリーズであるスコア譜のリリースが始まりました。
立ち上げから風の音さんの譜面表紙デザインを担当してきましたが、今回は甲冑をモチーフにしたデザインにしてほしいという、私にとってもドストライクなオーダーだったので、ノド側を威し(本来は小札を紐で連結すること)てみたり、正平革や蜀江文様など甲冑で使用される地紋をモチーフに選んだりしてみました。裏表紙も一工夫してありますので是非お求めになってご確認ください。
第一弾は團伊玖磨さんと和田薫さんの作品。曲と相まって凛々しさが際立っていると思いません?
 
 
 
楽譜のシリーズ装丁は楽しい。続々と同じデザインやそのバリエーションで発刊される楽譜の表紙は、新書などと装丁に似て、文字組に汎用性が求められるので、そこを踏まえながらデザインしていくのだ。そして何よりも版元の個性を体現するのはこの表紙のデザインにかかっていると言っても過言ではない。
日本の楽譜の場合、作品名・作編曲家名・編成などが日本語と欧文で併記されることが多い。それらの長短にも極端な差があるので、それらのバランスを取りながら、時には可変する部分も用意しなければならない。タイポグラフィの面白さとシステマティック性を同時に実現しなければならない。
実は今月か来月かにもう一つ別の版元からも新譜(シリーズ)の発表が予定されている。そちらも数年越しの企画なのでリリースが本当に楽しみ。
 
シリーズ装丁において、もう一つ大事なことがある。多くの場合、シリーズのデザインをしたデザイナーから、実際の運用は手が離れてしまうことが多い、ということである。つまり別のデザイナーやオペレーターが使いやすいフォーマットを仕込まねければ、すぐデザインが破綻する、ということ。
 
出版楽譜というのは面白い出版物である。書籍など多くの出版物が一人で「読む」「観る」ためにある。ハウツー本も例外なく。一方楽譜は使用しながら実演する奏者の向こうに鑑賞者がいることが多い。朗読を除き書籍ではまずそういった使用法は一般的ではない。