セル画

otoshimono2007-08-30

ニュース・サイトで「セル画によるアニメーション制作がサザエさんのみになってしまった*1」という記事を見かけた。
ボクの所属する事務所では昔からアニメ誌を2つほど担当しているが、セル画によるイラストの入稿がなくなって久しい。最近はすっかり画像データになってしまった。
最初のうちは彩色済みのセル画をスキャニングしただけのデータだったが、今では大部分をAdobe Photoshopなどのソフトウェアで作業した*2データが送られてくる。
雑誌掲載用に描き下ろされた止め画のセル画*3というのは、実際の使用サイズよりも大きく描かれているので運ぶのも大変。
昔はそんなデカイ包みがドカスカ宅急便で送られてきた。その上キズひとつ付けてはいけない取り扱い厳重注意のシロモノである。なにしろ一枚20万円前後もする一点モノだ。それを気をつけながら部分ごとカラーコピーし、スキャニングしてPhotoshopで再び合体させレイアウト用の仮データを作るのだ。厄介極まりない。
しかし、どの包みを開けた時も手仕事による圧倒的な迫力と精緻の極みである彩色の素晴らしいセル原稿には、職人芸としてのウットリするほどの美しさがあった。日本の文化の一つの高みを目の当たりにできた。
今の画像データだって高度な技術で制作された美しく繊細な表現で描かれている*4。コンピュータによる制作が手仕事に勝るとも劣らぬ大変さがあることだって職業柄理解できる。しかも何より便利なのだ。
しかし、もうモニタを通してしか見ることの出来ない原稿に、一抹の淋しさもあるのだ。
※写真は2000年頃にやった表紙の仕事から。この頃はまだセル画のが多かった。それにしても懐かしいラインナップですね。・・・送ってにょって言われてもねぇ。

*1:asahi.com【動画】セル画消滅? テレビアニメでサザエさんが最後

*2:線画の部分は実際にペン入れしてスキャンする場合もある。もちろん下描きをスキャンしてコンピュータ上でトレースが主流だと思うけど。

*3:静止している状態で使われる物。印刷媒体用であることもあるが、アニメーション作品上でもキメのポーズや場面で使う。動かす必要がないのので表現上の制約が少なく、髪や衣服、またはシャドウ部分など、細かいところまで描き込まれる場合が多い。

*4:コンピュータとはいえ、実際は人間がモニタを見ながら丁寧に描いているのだよ。自動的に作業してくれるわけではありません。