フェネル忌

「今日12月7日は偶然にもフレデリック・フェネル氏の命日でして・・・」東京佼成ウインドオーケストラの定期演奏会のアンコール、ナビゲータの真島俊夫さんがそうおっしゃった*1
そうだった。ボクは 日本で2004年12月8日の朝、某レーベルのプロデューサからフェネル氏の訃報のメールをいただいて呆然としたのだ。慌てて他の知り合いの音楽関係者に転送したのを覚えている。前の年、フェネル氏は念願のTOKWO*2とのアメリカ凱旋公演を実現され、その後も心臓にペースメーカーを付けながらも元気に指揮を続けておられたのだ。自宅で倒れられたその日の朝も、仕事に出掛けようとされていたところだったという。
TOKWOの40周年記念本をデザインした折、幸運にも一度だけフェネル氏とお話できる機会を頂いたことがある。ボクが駆け出しの頃にデザインさせていただいた、氏の半生を綴った本の仕事も覚えておられ、とても温かなお褒めの言葉を頂き、ボクは恐縮するやら舞い上がるやら、なんだかスゴイことになっていたと思う。そのとき頂いたメッセージ入りのサインはボクの本当の宝物となっている。
 
アンコール曲は「コルネット・カリヨン」。パイプオルガンのバルコニーとホール2階席に並んだ総勢28名のトランペットの鐘の音が、ホールをやわらかに包み込んだ。フェネルさん、もちろんKIITE*3ますよね。あなた愛した吹奏楽の音色は、今日もみんなを温かな気持ちにしていますよ。

聴いて―フレデリック・フェネル日本での軌跡

聴いて―フレデリック・フェネル日本での軌跡

東京佼成ウインドオーケストラの40年
作者: 佼成出版音楽出版室
出版社/メーカー: 佼成出版社
発売日: 2000/05
 
 
 

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ブラボー、マエストロ!アンコール!

ブラボー、マエストロ!アンコール!

*1:イーストマン・ウインド・アンサンブルを率いてで世界的に吹奏楽の芸術性を認知させたフェネル氏は、1984年の常任指揮者就任以降、このオーケストラを世界的レベルにまで押し上げた。1996年、桂冠指揮者。

*2:東京佼成ウインドオーケストラの略称。通常はTKWOと表記されることが多いが、「トクウォ」と発音し易く、「TOKIO(東京)」と発音が似ていて、海外に出た時に認知されやすいとフェネル氏が考案、使用した。何ともアメリカ人らしい合理性。

*3:「聴いて」。フェネル氏の口癖。氏は常に、演奏者にお互いの演奏を聴き合い、アンサンブルするように要求した。TOKWOの緻密なアンサンブル力はこうして育まれた。