18年

「あら、いらっしゃい。どうしたの?」
おばちゃんに、車2台で来たんだけど駐車場が埋まっている旨を話すと
「ちょっと待ってて。ワタシの車出すわ。もう1台は赤いカプチーノの前に停めちゃっていいから。えっと何人?」
「6人です」
「6名だって〜。席作ったげてー」
バイトの子にそう言うと、おばちゃんは店を出ていった。店内をチラと覗く。いつも通り学生で賑わっている。席につくと北欧系の綺麗な顔立ちの女の子が注文をとりに来た。留学生だろうか。
SFCの皆とわいわい食事をし、一服してると、知った顔が次々と入ってきた。
「おーしばらくー、今日練習?」「明日本番だよ。聴きに来てよ」「ダメだ。俺ら明日も練習」「んだよー、休んじゃえよー」「こっちも本番近いからそーもいかないんだよ」「じゃーまた今度な。そーだ、そっちの本番、俺ステマネ出来ることになったの、伝わってる?」「いゃ、でもアリガタイっす、ヨロシク」「ところでmana、大宮のオッパイパブって行ったことある?」「新宿なら。でも揉みませんでした、ってうわー、センパイ開口一番何言わせてんですか」
かつては同じ部活動だったが、今は別々のバンドで活動している。でも音楽で繋がっているボクたちは、出会うと挨拶もそこそこに、いつも音楽と馬鹿な話ばかりしている。そして実家に帰省するようにこの店に戻ってくるのだ。埼玉大学前のBe-Plantってそんな店だ。
一番年上のボクは、なんと18年もこの店でビープラ丼やメンチカツとしょうが焼き定食をかっ食らっている。
18年! ボクが大学に入学した年に生まれた子たちが、そろそろ大学に入学してくる歳月ではないかっっ。
しかしこちとら、大学生に毛が生えたくらいの中味しか未だに持ち合わせておらん。残念なオトナである。でもそーゆー心意気でもある。