ビギナーズ・ラック

言ってみれば、ボクは社会に出てから今まで非常に幸運な男だった。社会に放り出された瞬間は、内定が決まっていた会社が大学卒業も半月というところで倒産し、バイトしていた雑誌編集部の紹介で、何のスキルもなしに今のデザイン事務所の見習いを藁をも掴む気持ちで始めたので、自分は不幸のドン底だと思っていたのだが。
それから13年、這い上がるしかないから、何でも思い通りにやってきたし、仕事も家庭も音楽も、自分にとってはやっただけの成果があった。だがこれは全くの『長いビギナーズ・ラック』だった。
今年になって、今まで何も考えずに出来ていた、済んでいたことが、そう簡単にいかなくなった。物事がシンプルではない。
何かの問題が別の何かの問題と重なり、複雑な連立方程式と化している。
数学でも「エクセレント」な解答が苦手だったボクには、人生においても器用には立ち回れないし、理論よりも本能(てか感情)が先に立っちゃうから、冷静になるには人より多少時間がかかる。しかも解析するそばから、新たな式が加わり修正をかけていかなければならない。ちっとも解けない方程式。
 
こういう状況も含めて、困難な状況を逆に楽しめる大人になりたいし、
こういう困難なときこそ人に優しくできたらどんなに素敵か。
 
情けない気分だけれど、ゆっくりとでも進まねば。
そうでないと13年前のボクに叱られる。