母港

第21回サクソフォーン発表会へ。昨年も書きましたが須川展也さんが芸大の講師になる直前まで教えていたアマチュア門下生によるソロの発表会です。雰囲気はゆるゆる〜っとしていますが、音楽に対する真摯な姿勢と高いレベルの演奏(さすが須川門下!)には毎回感銘を受けます。
最後に須川さんのステージがあるのですが、今回はバッハの無伴奏チェロ組曲第一番と半音階的幻想曲を無伴奏で聴かせていただきました。息づかい、音色、技術、空間性、新たな挑戦、感謝の気持ち、…須川さんが演奏を通じて連れて行ってくれる音楽の旅は、いつも未来を向いています。
その後、恒例の打ち上げに参加。こっちは「+須川さん応援団」的な集まりです。発表会で好演をした月光浴住職、あさん、いまいまいさん、トランペットで参加したchiくんも勿論一緒。ワイワイと楽しく過ごしました。
そこでも須川さんから色んな話を聞かせていただきました。須川さんの素晴らしいところはクラシカル・サクソフォーンでは世界の頂点にいるのに「もっと上手くなって楽しくみんなと音楽を共有したい」といつも思い、努力と挑戦を怠らないところと、駆け出しのころの初心を忘れず、この集まりのような「自分の原点」をとても大事にしていることです。彼はみんなに対して「師匠」どはなく「音楽の先輩」として接します。職業を他に持ちながらも音楽の研鑽を積み、音楽を楽しむ彼らに対して本当に尊敬の念を抱いているといつも話します。
普通の一流の音楽家というのは「いかに自分がスゴいか」をアピールするのが精一杯です。孤高の位置にあろうとします。聴衆はそれを下から見上げるしかない、そういう存在を目指しているようにも見えます。ここが須川さんは全く違う。
音楽家としてのさらなる、ほんとうにさらなる高みを目指しながら、「帰ってくる場所」を何よりも大切に思っている。毎年のこの日をとても大切に楽しみにしているんです
須川さんはサキソフォンという船で新しい世界へ向けて冒険する船乗りに例えるなら、ここは母港なのだ、と思いました。