フェニックス


もう10年経ったのか・・・。須川さんがサントリーホールで山下一史&東京佼成ウインドオーケストラとデビュー20周年のコンサートを開催したとき、有り難いことにボクはライヴのCDとDVDのデザインを担当させて頂いており、当日はコンサートのリハーサルから打ち合わせで裏方に入ったり映像のチェックをしたりイソイソと動いていたが、10年後の今日は客としてこの場に悠々と座っている。
須川展也さんのデビュー30周年の記念コンサートにお伺いした。他の出演者もゲストというより須川さんの盟友である豪華な面々。天井にとどくばかりのバルコニー席まで須川さんの音楽が好きでたまらないという人々で埋め尽くされてる。
そして遂に幕が上がる。鈴木大介さん、小柳美奈子さん、トルヴェール・クヮルテット、ヤマハ吹奏楽団、指揮は10年前と同じ山下一史さん。須川さんは演奏に指揮にトークに、ゲストや作曲家、お客さんや自分に所縁の深い人々に最大限の敬意と感謝の念をはらいながら、最高のパフォーマンスを繰り出していく。期待に満ちていた客席がそれ以上の圧倒的なステージに驚嘆と歓喜の声で埋め尽くされる。
須川展也という人は、ボクが中学生の頃に小豆島で行われたミュージックキャンプの講師陣コンサートのステージに現れて以来(この時、須川さんは殆どデビューしたてだった)、常にボクの道標だった。何故自分がサクソフォンを吹こうと思わなかったのかが不思議なくらい、須川さんの音楽に入れ込んでいた。熱というものは不思議な作用を持っていて、大学に進学した先の吹奏楽部で、なんと須川さんはサクソフォンパートのトレーナーをされていた。その後、吹奏楽雑誌のバンドピープル編集部を経てデザイン事務所に勤め、東京佼成ウインドオーケストラの公演フライヤやCDのデザインを担当させて頂く様になり、当時は須川さんがコンサートマスターをされていたこともあってお仕事をご一緒する機会が増え、お会いする度に天にも昇る気持ちだったことを覚えている。ボクの独立後もお声掛け頂き、本当にお心遣いに感謝している。そして今、須川さんからのご縁で本当に多くの方々と出会い、皆さんから新しいチカラを頂きながら日々を有り難く過ごさせて頂いている。
10年前もアンコールの一曲目を吹き終わった後、須川さんはステージの上で感極まって涙された。そして10年後の今日は「今日は泣かないと思ったのに」なんて言って子供みたいなあどけない表情をしながらやっぱり泣いた。
須川展也という人は、演奏をひとつ終える度に成長し成熟し、無邪気に生まれ変わる。鳥をテーマにした楽曲を演奏されることが多いが、本当にフェニックスなのではないかと思う。
ボクの道標は常に煌めき続けるフェニックスである。

サキソ・マジック

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