アインザッツ

賢明なるアニメ雑誌愛読者の諸君はもうご存知のことと思うが・・・(ホントか?)
先々日の話だが、アニメディアの最新号の見本が届いたとn-yujiくんが報告に来た。ボクたちの事務所で連載モノのレイアウトをいくつか担当しているので、これはまぁ、毎月の光景だ。
しかし今月は、「・・・でotoshimonoさん、何か始まっちゃいますよ。」とあるページを開いて、さらにグイグイ迫ってくるので何事かと思ってアニメディアを手にとると
《アニメディア28周年記念連載 山本寛先生からのごあいさつ、吹奏楽部が舞台の青春小説「アインザッツ」はじまります!》とある。
山本寛さんはアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の演出、「らき☆すた」「かんなぎ」の監督をした人で、今とても注目されている方だそうだ(ゴメン、でも、どれも動いてるの見たことないんだ)。そんな彼が、自身のルーツである吹奏楽部をテーマにしたライトノベルを始めるという。しかもアニメ誌である。遂にここまで来た。ブラバンブカツラノベだ。
ハイ、もう一度言ってみよう。
ブラバンブカツラノベ。
もっと滑舌よく!
burabanbukatsuranobe
もっと短く!!
ブバブベッ!!!
・・・・・イイヤ。
オチないし。
 
そういや、最近「けいおん!」っていう軽音楽部の女の子たちのポンヤリした日常を描くマンガが人気になってて、n-yujiくんから吹奏楽でこういうのをやれる可能性があるかと問われたばかりだった。「吹奏楽部モノは担当楽器によるキャラクター分けが比較的明快に出来るから、楽器の描き込みなどの難点をクリアして、起用するキャラデザイナーを間違えなければ、そこそこそイケんじゃナイ? でもさー今まで言うほど成功してないんだよ、このジャンル。」などと無責任な事を言ってたら現実の方が早い足取りで進んでる。
 
部活吹奏楽モノは昔からそこそこあって、往年の専門誌「バンドピープル」にも連載小説があったし、もうちょい真面目に中沢けいさんの「楽隊のうさぎ」なんて名作もある。実写でも古くはキャストにSPEEDの今井絵理子さんと新垣仁絵さんや藤原竜也くんを起用した「L×I×V×E」があるし、数年前は柏木ハルコさんの漫画で人気が出て映画化された「ブラブラバンバン」などが話題になった。NHKの「中学生日記」では吹奏楽部を舞台にした話が時々取り上げられる。
漫画でも前述の柏木ハルコさんは言うに及ばす、最近では少年誌でも宇佐悠一郎さんの「放課後ウインド・オーケストラ」などが連載されている。
 
部活モノって「友情や恋に悩みつつも、ひとつの目標に向かって少年少女が成長していく青春群像」が殆んどだ。部活だからアタリマエなんだけど。例えば《ひとつの目標》が野球なら甲子園、ラグビーなら花園、そして吹奏楽なら普門館だ。プロットとして分かりやすいので、別にそのジャンルに興味がなくても読み進めることが出来る。
そうでなければ、学園生活の日常をポンヤリ描くのである。キャラクターの個性で動かすタイプだ。
どちらにしても部活は子供の生活をリアルに描くためのエッセンスで、そこがリアルであればあるほど、各業界の人から喝采される。話よりも先にそこが攻撃されちゃう。でも、ディテールがリアルなだけでは「よくできた模型」だし、そこに有りがちなプロットを組み込んでもたちまち風化する。そういう失敗作は吹奏楽だけでなく、他の部活モノでも山のようにある。
 
そういう訳で山本さんの新作には、吹奏楽部モノというだけでなく、その後の部活モノが右へならえしてしまう位の新しさを盛り込んでほしい。な。
部活、個人的にはドップリはまりすぎたせいか、11周くらいして苦手なんですけどね。