誰が吹奏楽を殺すのか(番外編その2)

 
レンタル譜の常識・非常識
 
とある音楽系出版社で社長さんと話した。ここでは吹奏楽のレンタル楽譜も取り扱っている。
社長「・・・でね、レンタル譜が返却されてくるんですよ。貸出してすぐに」
ボク「せっかちですねぇ」
社長「まっさらキレイなんです。ウチ、発送するときA3譜面を折らないで送るんですけど、折り目もなく返ってくる」
ボク「あれれ、裏面どうやってメクってるんですかね」
社長「つまりね、楽譜が届いたらすぐ、間違いなくコピーとってますね。すべて」
ボク「それ以外考えられませんね」
社長「レンタルは汚してはいけないと思っているんでしょうが、それは真逆です。ドンドン書き込んでもらってもいい」
ボク「プロ・オケの所蔵譜なんかは、前の奏者の書き込みが残ってるの当たり前の話ですよね。」
社長「返却後、書き込みで読みにくくなってたら弊社で消せばいいし、汚れが酷ければ、こちらが新しい譜面に差し替えればいい。ユーザーの皆さんが気にすることではありません。書き込みがイッパイの譜面が帰ってくるとむしろ嬉しいです」
ボク「《その譜面》を実際に使った証ですものね」
社長「こういう話もあります。ある日、ある学校の顧問の方から連絡がありまして。《何々というレンタル譜面の使用許諾だけ欲しい》と」
ボク「?」
社長「《楽譜はどうしたんですか》と聞くと《既に手元にあって、子供に練習させている》と言うんです。調べてみると、その方の使用履歴もない」
ボク「事件のニオイがしますな」
社長「一瞬イロイロ考えたんですが《いずれにせよ、譜面をレンタルしていただかないと使用許諾も出せません》とお答えしたんです。吹奏楽コンクールで演奏するつもりだったんでしょうね。最近は事前の著作権に関するチェックとか厳しくなってますから」
ボク「で、どうなりました?」
社長「最終的に納得して頂いて、借りていただきました。本来なら不正コピー譜の追求など、立場的に逆の話なんですけど」
ボク「コピー譜、どこから入手されたんでしょうね」
社長「だからね、譜面の値段を下げられないんです。作品と作家を護るためにはね・・・」
 
さて『レンタル譜面は書き込みなどしても(この版元さんの場合は破損という範囲でなければ、汚しても、読み易いように折っても)構わない』『むしろ新品同様で返ってくる方が不正コピーを疑われる』という話をご存知な方、少ないと思われます(版元さんにより多少の規定の違いはあります。添付される注意書をよくお読み下さい)。楽譜は本やCDやDVDなどの鑑賞する出版物とは違う、《使う出版物》です。楽譜というのは指揮者や演奏家同士の打ち合わせの上に成り立ちますから、楽譜にメモ書きをするのは当たり前の話です。ですからレンタル楽譜にメモがされることなどは版元としても全く想定内の話な訳です。
 
レンタル楽譜というシステム自体の是非、部活動でコピーした生徒専用の楽譜に学んだことを書き込ませて繰り返し反復させるという『教育的観点から見たコピー譜の意義』などは、また別の機会にお話するとして、レンタル楽譜を借りたからには正しく使用しましょうね。自分たちの首を締めますヨ。