漢字の現在


三省堂さんの Word Wise Book というシリーズのブックデザインを担当させていただいてるのですが、このほど第三弾の「漢字の現在―リアルな文字生活と日本語 (Word-Wise Book)]」という本が刊行されます。著者は笹原宏之さんで、現在 Sanseido Word Wise Web に 連載中の同名コンテンツの書籍化です。
日本人が当たり前の如く使っている漢字ですが、元はといえば「漢」字ですから中国語を表記するための文字として入って来たのですから《外国の文字》です。さらに漢字は《象形文字》、文字のデザインは何かの形を表しており、中には凹凸など明らかに生まれたての原型を残しているモノも少なくありません。なので漢字は一文字で意味がある《表意文字》、アルファベットやハングルのように音を表す〈表音文字〉とは違います。
そんな漢字ですが、PCや携帯電話などの電子端末の普及により新たな転換期を迎えています。以前は複雑さが嫌われ、簡素化する方向もありましたが、文字コードの整備や技術的な改善やデザインソフトの普及が進み、出入力の容易さやデザイン性の面白さからワザワザ難解だったり古風だったりする表記をすることが流行したりしています。
この本はそういう流れを踏まえつつ、古来より日本がどのように漢字に振れ、取り込み、楽しんできたかを、当て字、旧字、多角数漢字、幽霊文字などをトピックに出しながら楽しく解説していきます。
それに加え、アジア圏などの諸外国で漢字がどう扱われ、現在に至っているのかも書かれています。漢字を母国語として自在にあやつる中国は勿論、漢字を使わなくなった韓国やベトナムなど*1の漢字に対するイメージの変化なども興味深いです。韓国映画の「猟奇的な彼女」などのエピソードは楽しいですし、おそらく日本人にとっての梵字の如く見えるであろうベトナム人にとってのチュノムの話も新鮮です。
このシリーズ、ボクもなかなか気に入っています。今後も広がればよいと思っています。

日本語社会 のぞきキャラくり (Word-Wise Book)

日本語社会 のぞきキャラくり (Word-Wise Book)

新しい常用漢字と人名用漢字 漢字制限の歴史

新しい常用漢字と人名用漢字 漢字制限の歴史

*1:韓国では漢字をハンチャ(한자)と呼び、ベトナム製の漢字をチュノム(字喃・Chữ Nôm)といいます。