辞書っ娘

神保町の三省堂書店でこの週末まで開催されている「三省堂 近代辞書の歴史展」を、以前三省堂の辞書フォーマット作成でタッグを組んだ編集さんに案内をしてもらいながら拝見した。三省堂は辞書の編纂もさることながら、草創期には一度会社を潰すほどの資金を投じて百科事典を編纂したり、その後も専用書体や用紙の開発も行ってきたアツい出版社だ。その熱のある歴史が出版物に現れている展示は、編集さんの解説(展示の企画にも携わっている)もあって益々興味深いものだった。

中には大辞林初版の活版原版もあったりして、これはもう失われて行くテクノロジだけになかなか見る事が出来なくなるので貴重である。
また、三省堂国語辞典の編纂者である故・見坊豪紀氏による用例カード(見坊カードと呼ばれる)の一部(全部で145万枚くらいあるそうだ)も紹介されており、語学研究や辞書編集に携わる方々には垂涎の展示であろう。

実はデジタル化以前の辞書の制作手法の知識が殆どなかったため、テクノロジの進化とコンテンツの編纂が一体となって進められた経緯を知るにつけ、現在も辞書の本文デザインに関わる身として、襟を正す思いであった。
見終わった後少しお茶をしながら展示についてや、ボクの持って来た言海の古書を見ながら日本語辞書の歴史に思いを馳せた。
ところで余談であるが案内をしていただいたこの編集さん、若く美しく凛々しい女性(でも既婚ですよ! 皆様残念)なのだが、日本語学や辞書編集にかける情熱が半端なく、その突き進み度合いや友好関係にこちらが驚かされることがある。「辞書っ娘」という言葉があるとすれば彼女の事を指すのであろう。極めてピンスポットなヒロインだが、彼女を題材に言葉のアースダイブを絡めたミステリでも書けるのではないかしらと妄想が膨らむ。どなたか興味のある作家さん、いらっしゃいません? ボク、装丁しますよ!