東北の村の近世

東北の村の近世  出羽国村山郡の総合的地域研究

東北の村の近世 出羽国村山郡の総合的地域研究

かなりコアで難しい研究書の装丁依頼を受ける事がありまして。こちらもその中の一つなのですが、どこかノスタルジーを感じる温かみのある装丁にしたいと思い、出羽国村山地方を経済面でも精神面でも支えてきたベニバナをモチーフにしました。
山形でベニバナといえば映画「おもひでぽろぽろ」を思い浮かべる方も多いかと思います。ブルガリアンボイスが響く中のベニバナ畑の夜明けの美しさは、アニメーション史上に残る名場面でありますが、偽ロハスや反ナントカ気分で田舎暮らしに憧れる方々にもう少しぶっとい風穴を開けてくれる作品であれば痛快でしたのに、と悔やまれます。
は、おいといて。
実際、近世において政治権力が分散していたこの地方ではベニバナ農家が大変な力を持つに至り、独自の文化圏が文字通り花開いたようです。
装丁をするとき書籍の内容や背景を勉強するのですが、こういう機会でもない限り現在の山形県が4つの文化圏に分かれる事や、近世史の最新研究によって、時代劇等で語られる紋切り型の身分や歴史観への違和感や、人々の生活が生き生きと書き出されてきている成果を知る事が出来、とても興味深いです。
かなりの専門書なのでお勧めとはいきませんが、こういった成果がけっして研究者の中だけに埋もれるのではなく、教育の現場や、地域社会のつながりの再生や悪習慣の是正、また、それこそ時代劇の脚本のヒントのような一般的なところまで裾野が広がってゆけば、さらに深みの増した日本文化になるのではないかと思います。