小寺香奈ユーフォニアムリサイタル2012

さて、ユーフォニアム奏者の小寺香奈さんがまたまた意欲的なリサイタルに挑みます。


小寺香奈ユーフォニアムリサイタル
日時|2012年2月20日(月)開演19:00
会場|すみだトリフォニーホール小ホール
料金|前売り¥3,000-
取扱|ダク/ドルチェ楽器
   小寺香奈コンサート事務局(mail予約可)
 
日時|2012年3月9日(金)開演19:00
会場|盛岡市民文化ホール(マリオス)小ホール
料金|前売り一般¥2,000-,高校生以下¥1,500-
取扱|市内各プレイガイドにて1/7より発売
 
共演:羽石道代(Pf)
   松本卓以※※(Vc)
   牛渡克之※(Eu/盛岡公演)
 
曲目|・近藤譲:委嘱新作※※
   ・近藤譲:スタンディング
        ー発音原理の異なる不特定3楽器のための※※
   ・田中吉史/告知、会見、ユーフォニアム
   ・P.スパーク/ユーフォニアム協奏曲第1番
   ・D.ブルジョワ/ユーフォリア
   ・P.スパーク/ユーフォニズム※(盛岡のみ) 他

問合|小寺香奈コンサート事務局
   kotekana.concert★gmail.com(★を@に変換)

裏面に書かれた彼女の言葉を転載します。

演奏スタイル、作品ともにユーフォニアムがその影響を受け続けてきた英国式ブラスバンドは、誤解を恐れずにいうならば、ある種の民族音楽のようなローカルさが魅力です。その伝統を純粋に継承し高い芸術性と人気を誇るフィリップ・スパーク。それとは全く音楽
的土壌を異にする近藤譲。相容れない様式を持つ両者の作品をあえて同時に取り上げることで、ユーフォニアムのレパートリーを捉える視点を《ローカルからグローバルへ》と拓くことを試みます。私の現在の興味と問題提起をそのまま一晩に詰め込んだ5回目のリサイタル、是非お楽しみ下さい。

佐伯茂樹(古楽器奏者・音楽評論)さんは「古楽演奏とは時代劇である」と仰っていますが、小寺さんの「英国式ブラスバンドは、誤解を恐れずにいうならば、ある種の民族音楽のようなローカルさが魅力」という下りにどこか文脈が似ていると思っています。英国式ブラスバンドは、その独特な文法(演奏解釈)によって表現してこそ、真価が発揮されるものだからです。
我々日本人は幕末の開国より新旧織り交ぜて怒濤のごとく流入してきた西洋音楽を玉石混淆で「クラシック」というカテゴリーで同一視してきた感があります。
ローカルとグローバルは本来どちらかが優れているという価値観の下に判断されるものではないのですが、特に日本において管楽器を嗜む方が勘違いしやすい事象として、英国式ブラスバンドをかつてのコカコーラ的な発想で「イギリス(コカコーラはアメリカ)からやってきた世界を席巻する新しい価値観」と捉えがちです。彼女はそこに疑問を抱きつつも、ユーフォニアムという楽器の能力の高みに貢献した英国式ブラスバンドというローカルなフォーマットと作曲家にリスペクトも抱いているわけです。
また、彼女が評価されている仕事としてのコンテンポラリーとも定義される作曲家との恊働作業による新しい音楽的価値観の創出芸術においても、さらにグローバルに推し進めて行きたいという意欲。しかし、これらの芸術はまだまだ日本の管楽器愛好家たちに浸透しているとは言い難いわけです。
大事なことは、どちらの音楽芸術も現在進行形ということであり、また相容れない価値観として語られるべきではない、彼女はそう仮定してみたわけです。それをユーフォニアムというブラスバンドでは決定的な地位を、コンテンポラリでは海の物とも山の物ともつかぬ評価の楽器で挑むわけです。
この意欲的な取り組みを今回、2つの公演会場で目撃出来るということは鑑賞者にとっても面白い体験になると思います。是非、足をお運び下さい。
 
デザイナーとしての今回のポイントは、実は見た目より一筋縄ではいかない文字組に挑戦しているところです。本来ならそういう部分はわかりやすく表現するのがボクのモットーですが、今回はそれを全て押さえ込みました。すごく微妙な変化が紙面で繰り広げられています。単に縦横織り交ぜて組んであるわけでも、2枚の同じ写真を使っているわけでもありません。そこに彼女の《現在》を感じ取っていただければ成功なのですが。