La Strada

ボクは人というのは結局、分かり合えないものだし、同じ道を歩くことは出来ないと思っている。自分の人生は墓場まで自分で背負っていかねばならぬ。それでも友人や知人やあるいは尊敬する人に、共感したり、元気づけられたり、逆に彼らを応援することは出来る。そういう息づかいをお互い感じながら生きる事が「支え合う」ということなのだと思う。
人生というのは引き返すことが出来ないのだけど、仮に引き返したところでそこに当時の自分と同じ価値観を共有していた友はもうとっくにいない訳で虚しいばかりだ。後ろ向きの発想のまま一旦そういう夢想を始めてしまうと、現実との格差が広がるばかりで、今を共有できるはずの人とも話が出来なくなってしまう。ノスタルジーというのは確かに美しいかもしれないが儚い幻だ。自分の頭の中で都合良く組み替えられた作り話だ。鑑賞には値するが、実際形にすると身勝手で陳腐な光景だ。現実の過去は今に向かって歩いてきた道の一足一足であることを思い出さなければならぬ。
また、自分と価値観の違う人、自分にとって後ろめたい存在、自分を否定する存在、自分が邪魔だと思う存在、憎むべき存在、恋敵、そういう人を自分から遠ざけるのは、実はリスキーなことだと思っている。そういう存在こそ、自分の価値観を絶えず見直し、知見を高め、技能を磨き、次のチャンスに備えることが出来るダイレクトな鏡だ。とても辛いが、こういう人々の存在は自分の道を歩む上で重要なファクターであることは間違いない。
まずいのは自分に絶えず何かを言い訳しながら、人との価値観のズレを恐れ、自分が否定されるのを恐れ、人と会うのを恐れ、憎むのを恐れ、恋に破れるのを恐れて精神的に閉じ籠ってしまうことだ。
もう一度言うが、人というのは結局、分かり合えないものだし、同じ道を歩くことは出来ないと思っている。ならば自分の道に人が入ってくることは有り得ないのだから、自分に言い訳なんてやめて、びくびくしながらでもいいから前を見て歩き、空を見上げてちょっと笑ってみることだ。そうすれば気付くはずだ。みんなそうやって歩いていることに。