与野の桜

ボクたちの住んでいるさいたま市中央区は合併前には与野市と呼ばれていました。旧市街の本町通りは鎌倉街道の中継地であり市と宿場として栄え、江戸時代には物流センターの役を担った重要な街でした。そういう訳で周辺には由緒ある見所がけっこうありまして、そこに植わる桜もとても美しく見事です。

与野公園入口の桜。この時期は露店も立ち、花見客で賑わいます。与野公園は明治10年に西洋式庭園として開演された古い歴史を持ちます。薔薇園が特に有名ですが、桜も見応えがあります。

円乗院は真言宗智山派で鎌倉時代に畠山重忠が創建したという、これもまた歴史ある寺院。山門や本堂、多宝塔は昭和期に建立されたものとはいえ、堂々たる造りです。本堂前にあるシダレザクラは推定樹齢約250年とのことで、満開の本日は見物客が後を絶ちませんでした。

さてこのお堂は庚申堂です。どこに建っているかというと、

本町通りの南端の三叉路にあります。どうやら町に疫病が入るのを防ぐ役目をしているらしいです*1。この写真は庚申堂から北を向いて本町通りを見た格好になります。左後ろから曲がって本町通りを通る道が「羽根倉道」といって鎌倉街道上道と中道を結ぶ中継支道。この三叉路から右後ろに進む(実質上は本町通りを直進している)道は妙行寺金比羅堂境内にある鈴谷の大カヤ(推定樹齢1000年)の傍を通り、西堀にある真鳥山城址(畠山重忠家臣の真鳥日向守の居城と伝わっている。*2)に向かう旧い道。そういう重要な分岐にこのお堂は建っているのですが、小さいのでちっとも目立ちません。しかし小さい桜の古木があり、なかなかの風情です。
ところで、ここから羽根倉道を荒川方面に進むと埼玉大学裏手に道場という地名があり、ここはやはり畠山重忠が建てたと言われる城館跡があります。道場は荒川に近く、畠山氏の本拠である菅谷館との水運の便も良いのです。円乗院は元々その道場の地で創建され、後に本町通りに移されたとの事。真鳥山城の立地といい、畠山氏が羽根倉道と与野をいかに重要視していたかが判ります。
桜を愛でながら遠い鎌倉時代に思いを馳せるのも、また一興。

*1:本町通り北端の小村田氷川神社境内にも庚申塔があります

*2:現在の西堀氷川神社から日向不動尊周辺