WISDOM


先週に発売された三省堂ウィズダム英和辞典第3版》《ウィズダム和英辞典第2版》の装丁を担当させていただきました。辞書というのは「本」というインターフェイスの機能を最も駆使したプロダクトであるため、古来「本」が作られたその時より存在し、今後どんなに情報の電子化が進んでも無くならない類いの一つだと思います。その中でも語学辞典は自国や他国とのコミュニケーションの要として重要な地位を占めている知の体系です。
WISDOMは三省堂さんの英語辞書の中でもコーパス(大規模英語データベース)を全面活用した最上位シリーズとして、難関校受験生や社会人に今や広く認知されているベストセラーであり、今回の改訂版において装丁を担当させていただいた事は大変名誉なことです。
 
実は三省堂さんの英語辞書の装丁をさせていただくのはこれで三度目です。最初は初学者向けの英和辞典《エースクラウン英和辞典》、中上級者向けの英和・和英辞典《グランドセンチュリー英和辞典第3版和英辞典第3版》です。それに今回のWISDOMが加わり松竹梅コンプリートです。

これらの3つの辞書は刊行時期やコンセプトが違ってはいますが、結果的に3つとも私にデザインを担当させて頂けたため、デザインの側からコンセプト(社会的な役割)の違いと版元としての統一感を同時に実現出来たのではないかと自負しております。
勿論版元さんからのご依頼の上で成り立っているので、初学者向けから上級者に向けての色彩計画の変化(明るいトーンから落ちついたトーンに)、造本上の資材の変化(表紙に採用されているクロスや箔の質感・本文用紙の連量)など、基礎的な仕様は版元さんのご意見ありきで進んでいる部分もありますが、表1における日本語タイトルの大きさの変化とフォント選択*1や、欧文のビジュアルデザインとしての専有面積と遊び具合、帯におけるフォント選択の違い、版元としての品格を統一するためのレイアウト上の設計など、デザイナー側からの提案とその採用で成り立っている部分もあります。
買い求める方に何も言わずとも、自然と意図の違いとブランドの統一感を判って頂くことが私の使命なのです。大変難しくもあり、意義のある仕事です。
中身におきましても、それぞれ特徴がしっかりあり、とても良い辞書だと思います。装丁でコンテンツの持つ翼をさらに高いところに持って行ければこれ以上幸いなことはありません。

ウィズダム英和辞典 第3版

ウィズダム英和辞典 第3版

ウィズダム英和辞典 第3版 特装版

ウィズダム英和辞典 第3版 特装版

ウィズダム和英辞典 第2版

ウィズダム和英辞典 第2版

グランドセンチュリー英和辞典

グランドセンチュリー英和辞典

グランドセンチュリー和英辞典 第3版

グランドセンチュリー和英辞典 第3版

エースクラウン英和辞典

エースクラウン英和辞典

*1:特にエースクラウン&グランドセンチュリーとウィズダムでは採用しているゴシック体が異なります。前者はモリサワのMB、後者はフォントワークスの筑紫ゴシック