いまどき色校正

最近は色校正の折に印刷所からデジコン(デジタルコンセンサス)のフィルムを介さない出力が届けられる事がかなり増えました。初期のデジコンはデータを単に印画紙出力するものだったり、昇華型出力っぽいものだったり、単なるインクジェットプリンタやレーザープリンタ出力だったり、校正を見るデザイナー側からしてみれば、まったく校正にならないものが多かったんです。
じゃあ昔は良かったのかと言うと、フィルムを出しての校正刷りでも校正刷りの専用機だったり、校正刷りの専門業者のものだったり、単なる青焼きだったり、まぁ、本機(実際に刷る機械)校正でなければ昔だって厳密な校正はしづらかったのですが、それでも写真分解や色指定やレタッチが上手くいってない感じとか、ゴミや傷の混入とか、そういうのは指摘出来た訳です。
で、最近の、例えば富士フィルムのPRIMOJETなどは、実際オフセットで刷ったときのアミ点の重なり具合なんかも再現出来るデジタル出力機で、見た目、すごいキレイな訳です。
また、モノクロの場合も、高解像度の掛け合わせでおそらくCMYKの4色を使ってひとつひとつのアミ点を再現していたり。ルーペで見るとかなり驚異的なことになっています。なんちゅうテクノロジーだろうと。
物凄い技術力を発揮して、校正刷りをデジタルで再現している訳です。
で、これで我々デザイナーが校正出来るか、というと、出来ない。
再現出来るであろう色やデザインは、事務所にある業務用のカラーレーザーであればある程度は把握出来るし、逆に実際刷ってみないと判らない版ズレ(カラー印刷のときに、それぞれの刷版がズレてしまうこと)や刷版の汚れや傷は、この校正刷りからは何も判断出来ません。また、写真分解にしても、PROMOJETの出力通りに行くか、殆ど手応えが掴めません。
デザイナーが見たい校正は、良い状態というより悪い状態です。「これ以下のクオリティはNG」の下限が見たい訳です。「少なくともこの状態はキープしなさい」という指示を出したい。そうでないと、実際の製品の仕上がりに責任が持てない。
現在のPRIMOJETなどの美しいデジコン校正刷りは、どちらかというとデザイナーに向けて、というより、広告などのクライアント担当者に向けて「こんなにキレイに仕上がりますからOK下さい」というハンコを貰うため、という、誤摩化しではないにしろ、「ええかっこしい」な感じがして、あまり好ましい傾向だとは思えないのです。反って出版・印刷のクオリティを落としているのではないかなぁと。
ちょうど受験戦争に勝ち抜いて大学に入ったら勉強せずに遊んでばっかりで、卒業するころにはスッカリお莫迦さんになっていた人(私もその一人だと思いますが)、のような・・・。