The Kelmscott Chaucer


駆け出しの頃、師匠から「ブックデザインの奥義はここに全部あるから穴があくほど見なさい」と言われて手渡された本がこの「The Kelmscott Chaucer」のファクシミリ(複製・複写本)。いつも事務所の資料棚にあって、時間が出来るとウットリしながら見ていました。

ウィリアム・モリスが製作したこのジェフリー・チョーサー著作集(ケルムスコット・プレス)は世界三大美書に挙げられていて、原本を手に取ることなんて到底出来ないのですが、このファクシミリ版でも美しさの片鱗を味わうことは十分に出来ます。

師匠の持っていた版(今でも元勤め先の本棚に鎮座しているはず)と同じものがどうしても欲しくて、イギリス在住の画家である嶋野ゴローさんにお願いして、探して送って頂きました。

「The Kelmscott Chaucer」のファクシミリとしては高価な部類ではないのですが、WORLD PUBLISHING CO.によるこの版の装丁は、うらわ美術館に所蔵されている総白豚革・空押し装丁本の体裁を模していてなかなか味わい深いです(以前ガラスケース越しに本物を見てその迫力に卒倒しそうになった)。

状態は良いといっても、それでも1958年刊行の古書なので、傷んでいる部分も多く、近くどこかで修繕してもらおうと思っています。
私にとっては師匠から贈られた聖書です。