CDパッケージの存在価値

春先怒涛のCD制作7連発の6つめがやっとプレスに回り、7つめもブックレットを組み終わりました。あとは校正に回ってこちらも来週にはプレスに回ります。
今年前半は何故か、ここ数年では考えられないくらいCDデザインの依頼が多いのです。1月から6月までに12タイトル作ってますから、一月に2枚ペース。CDが音楽メディアの花形だった勤め人デザイナー時代でもこのペースはちょっとありませんでした。
仕様も、標準ジェルケース、マキシサイズ、デジパック標準、デジパック特別仕様、紙ジャケットとあらゆるスタイルがやってきました。
これはまたCDが売れるようになったということではなく、その存在意義と価値観が転換したからではないかと思います。ご依頼いただいたクライアント(レーベルやアーティスト)のほとんどが、演奏会やライヴでの販売を主眼にしており、ロット数もCD最盛期では考えられないくらい少なめです。
音楽配信やYouTubeによる鑑賞が主流になりつつある昨今、CD(*注)は単なる鑑賞目的のメディアというより「アーティストとの《直の》繋がりをリアルに感じられる」アイテムとして「唯一無二のモノ」なり始めたのだろうと思います。だからこそ、ライヴ会場でアーティストに終演後にサインを入れてもらってその時に会話を少し交わしたりしながら「繋がった証」となるのだとうなぁと。そして家に持ち帰り、そのCDを再生するとき、アーティストと共有した時間と空間と価値観を思い巡らすのだろうと。
音楽だけでなくデザインを通してアーティストと繋がっている感覚、思い出や価値を共有している感覚を得られること・・・、CD制作におけるデザイナーの使命はまさにそこにあります。
実際CDの制作費は以前とは考えられないくらい小規模なものとなりましたが、唯一無二感は、さらに求められる時代になりました。かつてジャズで有名なブルーノート・レコードのアルバムは、限られた低予算の中でそれを逆手に取り、特徴のある名作ジャケットの数々を世に送り出してきました。あのスピリットを引き継ぐ者として進んで行ければ良いなぁと考えています。
*注:正確に言うとCDに代表されるパッケージメディア。CD、DVD、Blu-ray、最近見直されているレコード、カセットなどのアナログメディアも含みます。