デジタル版教科書

デジタル版だけでも正式な教科書に 政府が閣議決定

これ、このまま見出しだけ読んでしまうとミスリードになりがちなので説明を加えると、2020年度版から「デジタル版だけの検定教科書の出版を政府(文科省)が認める」という話ではなく、『授業内容や事情によっては、紙の教科書ではなく、デジタル版教科書をメインに使ってもいいよ』という話。
かなりややこしいんだけど、現行の学校教育法ではデジタル教科書は常に紙ベースの検定教科書に紐付けされた、併用を推奨されている《弟分(副教材)》の扱いなんです。単独行動は許されない子なんですね。
それを「『弟分のみでも授業を進めていいよ』という前提に法律を変える法改正案を閣議決定しました」とニュース。
出版社はデジっ子だけの制作でもいいんだぜヒャッフーって話ではない。
なので、一足飛びに学校の教科書が全部デジタルになっちゃうよ、ってな話とはま〜だまだ遠い話ですし、デジタル版教科書開発・出版についてはもう随分前から各出版社は取り組んでいるので、我々制作サイドにとって天変地異的に出版事情がひっくり返るという話でもないんですね。法改正以後も、紙版の検定が通ることによってデジタル版も同時に成立する(同じものとみなす)仕組みはさほど変わらない。つまり検定教科書を出版するには紙ベースが基本という方針は変わらないわけです。
では、なんでそれがニュースになるかというと、視覚障害や識字障害をもつ児童・生徒さんなどが授業を受けやすくする環境に新たに道が開けるよ、というバリアフリーやユニバーサルデザインに関係した話(それ以外の複雑なゴニョゴニョ事情はここでは書きません)なんですね。
で、実は昔から、紙ベースでもそういった対策として『拡大教科書』というものがあるのです(コメント欄にリンク張ります)。僕はてっきり、デジタル版をメイン利用可にすることによって、これを廃止する方向にする、という話なのかと思ったのですが、実際はそういう簡単な事情でもないらしく、いやはや、誰もが楽しく学べる教科書作りの険しい道はこれからも続くのだなぁと、一息ついて、仕事に戻るのでした。