森林の江戸学 II


大きな災害がある毎にこの本を引っ張り出します。「森林の江戸学」「森林の江戸学 II」(共に徳川林政史研究所 編/東京堂出版 刊)。自分が装丁させていただいた堅めな本を引っ張り出して読み返すことはそうそうない珍しい2冊です。
実は戦国時代に日本の国土は木材の乱伐や膨大な石切や戦争によりかなり山林が荒廃し、江戸幕府の初期の急務はその回復でした。また江戸中期にも農地拡張や都市開発のために自然破壊が進み、地震・津波・台風・土砂災害などが重なり度々飢饉に苦しめられます。
この本は、江戸時代の林業の視点を中心に、幕府と役人たちが250年かけてどのように山林保全と自然災害に立ち向かっていったのかが書かれた大変興味深い2冊です。
これらのノウハウは明治期はある程度引き継がれるものの、度重なる戦争で再び荒廃し第二次大戦後の経済優先策で一気に失われ、そのロストテクノロジーは日本中に深刻な花粉症と土砂災害に弱い山林を作り出す原因となるのです。
江戸期の災害対策の跡は、東日本の震災でも機能した仙台藩の防潮林等の設備もありますが、多くは忘れ去られた遺構や古文書や碑文などに残ります。
一筋縄ではいかない防災について、過去の記録から学べる糧は非常に多いのです。

徳川の歴史再発見 森林の江戸学 II

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徳川の歴史再発見 森林の江戸学

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