正しさ?

僕はデザインに『正しさ』なんてものはないと思っています。また「僕ならこうするなぁ」くらいのことは考えたり、それが仕事であれば提案もしますが、デザインというのはデザイナーの考えが一番偉い訳でもなく、同じゴールを目指すも立場の違った意見の中で揉まれながら『それそのもの』のカタチに育ちます。
また経年というのは不思議なもので、どんなデザインでも時間が経てば良くも悪くもそれなりに社会に馴染む。初出は劣悪な評価を受けていたものでも味わいと受け止められるようにさえなる。例えば80年代ファンシーとして現在再評価・再構築されるデザインの多くは「ダサい」という評価だった。
往々にして人は自分自身へのインプットが多かった時代(特に学生時代から社会人駆け出しの頃)に影響を受けたモノやカルチャーを無意識に神評価していつまでも引きずってしまう傾向があり、年を経るほどに新しいモノやカルチャーへの評価を低く見積もる。普段生活する分にはそれでも一向に構わないと思うが、モノやカルチャーを送り出していく身としてはそれは致命的と思っている。
かつて評価していなかったものへの価値の気付きはとても大切だと思うが、自分の磨いてきた技芸の高みを目指すには、絶えず新しい考え方やモノやカルチャーのインプットは怠ってはならない。今日もそう自分に言い聞かせて前に進む。