新富町にて

otoshimono2008-02-17

桶川市民吹奏楽団の演奏会の終演後、恩師である指揮者の近藤久敦先生の楽屋を訪ね、急いで電車に飛び乗り一路新富町へ。本日4 Bone Linesのレコーディング最終日。デザイン修正案や諸々の打ち合わせ。
レコーディングはリテイクと微調整が中心。ボクは合間合間で打ち合わせをしながらレコーディングを見学。emixの方は浄書の打ち合わせというより、finale*1の話題で意見交換。結構盛り上がっている。だんだん普通に高校の先輩後輩同士に見えてきたゾ。
さて、今日レコーディングを聴いてて勉強になったことがある。前々から色々考えてた事だけに、最高の形で実例に触れられると「ウンッ!」と唸ってしまう。
ある曲の出だしで村田さんのトロンボーン一本から始まる部分があるんだけど、村田さんの提案で、前のテイクだとリズムとフレーズのニュアンスが単調過ぎる気がするので色々やってみたい、ということになった。
ラフにしてフレーズを長めに作ってみたり、逆に一つの音の粒をコンパクトにしてリズムを立たせたり、何テイクか録った。テイクごとにリズム感を変えたこのブロックを差し替えながら聴いてみると、それぞれに全く違う曲に聴こえてくる。
ここで大事なのはリズム感の問題であってテンポの問題ではない、ということだ。
この曲自体のレコーディングはドンカマ*2を打ってるのでテンポは機械的には一定である。村田さんは自分のテンポ感の中で作り出したリズムとフレーズを、実際のテンポにシンクロさせて演奏する。するとテンポは一定で譜面上でも同じ音符が並んでいるのに、とても自由なリズムとフレーズが生まれてくる。
ここで行なわれていることは音楽的にとても高度な事なので到底真似出来る訳ないが、アマチュアにも有効なヒントが沢山詰まっている。
一般にテンポとフレーズが別の意味なのは分かると思うが、リズムとテンポは混同されやすい。しかし、明確に、リズムとテンポは違う。だから当然、リズム感とテンポ感も別モノ。そしてさらに難しく言うと、(実際の)テンポと(個々が持つ)テンポ感も別モノ、だ。
大事なのはまず自分のテンポ感を安定させる事だ。でもこれってとても難しい。メトロノームと四六時中向き合っていれば得られる物でもない。ボクもテンポ感に関しては全く自信がない方なので、よいトレーニング方法があれば教えて欲しいくらいだ。

それでその安定したテンポ感の中で、フレーズやリズムを音楽のニュアンスに合わせて変化させる。だから同じ四分音符4つのリズムでも、マーチにもスゥイングにもタンゴにも演歌にもなりうる。この時点で一人での音楽は成立する。
これをスタジオレコーディングならはドンカマに、練習ならメトロノームにシンクロさせる。そしてこれを最終的に、コンダクターやアンサンブルすべき他のメンバーのテンポ感とシンクロさせながら音楽を作る。リズム感に関しては聴き合いながら、または打ち合わせながら統一していく。これが合奏だ。細かく分解するとこういう手順が見えてくる。
音楽的に力のある人はさほど意識しなくてもこれが出来てしまうが、ボクのような下手の横好きは、そうはいかない。
だから絶えずそういう意識を持って練習や合奏に臨まねばならない。
 
そしてこのリズム感とテンポ感の話は、デザインにだって十分通じる理屈だ(ても、この話は長くなるので、また次回)。
 
そんなことを考えているうちに、最終の音入れが終わった。村田さんたちはYouTube用に何か一曲やるか、と言って古賀さんのデジカメで嬉しそうに撮影している。みんな無邪気でカワイイ。
最後に4 Bone Linesのメンバーとスタッフとで記念写真を撮った。皆、この航海には一人として欠けてはならないスペシャリスト。ボクもクルーの一人として、良い旅になるよう貢献していきたい。

*1:楽譜を書くソフト。emixの仕事道具

*2:元々はドンカマチック(DONCA MATIC)の略称。マルチトラックレコーディングの際のガイドリズムのこと。クリック音ともいう