シンバシ・シンパシー(その2)

前回までのあらすじ:毛利彰さんの追悼展を観た後、ボクたちは学研の「歴史群像」シリーズを育てた伝説の部長さんに連れられて新橋の飲み屋で一杯やることになった。
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今回のメンバーは伝説部長さんとその奥様と現在「歴史群像」の編集を手がけるtotriさん。奥様は現在フリーのエディター&ライターなんだけど、元は学研の方。という訳で3ガッケンの1デザイナーという構図だった。こういうシチュエーションってまずない。学研は大きな出版社なので、だれと同期かとか、アイツは今どうしてるとか、そういう話題が自ずと出てくるのだが、新橋というところがそうさせるのか、人の会社の全然分かんない話を聞くのって割りと楽しい。とりわけ伝説部長さんの話は学研の歴史と共にあるから、とても興味深い。
その話題の間に部長さんはボクに色んな話をしてくれた。「デザイナーさんって2種類いるよね。作る本の内容に拘ってデザインする人と、内容に拘らずに自分のデザインをする人。でもどっちが良くてどっちが駄目って訳じゃないんだよね〜。それはね〜」とか「昔、仙人みたいなデザイナーさんがいてさぁ。一度一緒に旅行に行ったんだけど、その人作務衣で来たのね。何にも持ってないの。『荷物どうしたんですか?』って聞いたら『お金持ってるから大丈夫』って言うんだ〜。で、ある日突然『ボク、デザイナー辞めるよ』ってオレにデザインの道具くれちゃって東南アジアのどっかに消えちゃったんだよね〜。変な人だったな〜。いいデザインしたけどね〜。」とか、面白い話がポンポン出てくる。
普段デザイナーばかりの中で仕事してるから、『デザイナーについての話』なんてあんまり聞かない。デザイナーってあんまり自分や仕事の話したがらないし。だからこそ、編集の立場からデザイナーへの視点って新鮮だ。
ボクらデザイナーは「デザインした制作物がどう見られてるか」ってのには拘るけど、「自分がどう見られてるか」ってことにはあまり拘ってないかもしれないかもしれない。けど、見てるんですよね〜、編集は。編集特有の好奇心をもって。
編集に面白がられるデザイナーになりたいなぁ、と思います。仕事的にも人間的にも。