誰が吹奏楽を殺すのか(2)

 
一:悪夢の金曜日
 
2008年12月12日金曜日。すみだトリフォニーホールにて東京佼成ウインドオーケストラ第99回定期演奏会が公演された。指揮はダグラス・ボストック。プログラムは「第ニ組曲(グスターヴ・ホルスト)」「落葉(ワーレン・ベンソン)」「フランス組曲(ダリウス・ミヨー)」「主題と変奏(アーノルド・シェーンベルグ)」「天使ミカエルの嘆き(藤田玄播)」「リンカーンシャーの花束(パーシー・グレンジャー)」。第100回定期を目前に、前常任指揮者による20世紀の吹奏楽のマスターピースのみで組まれた意欲的なプログラムだ。お客はモチロン満員御礼、ボストックのサイン会には長蛇の列、のはずだった。
が、現実は目測でホールキャパシティの三分の一、どう甘く見てもプロオケの定期公演の動員ではない。勿論、演奏家のモチベーションは下がる。聴きに来た人の演奏評価も辛口になる*1
このオーケストラに何が起こったのか。
ボストックの常任指揮者任期満了の後、特に常任を立てずに来た東京佼成ウインドオーケストラは、当初こそ客演指揮者による音楽性の違いを楽しめたものの、次第にオーケストラとしての独自性を失ったとの評価もあり、また、マネジメントサイドの脆弱性を指摘する人もいる。多少なりとも仕事上の関係者として公開ブログで語るべきでない事もあるし、逆にスタッフやプレイヤー個々の証言から事実と反する誤解をこのオーケストラが受けている事も分かり、そこは折りにふれて弁護したい。だが、いずれにしても目に見えて定期演奏会の動員が「減少してきた」のは事実である。
しかし、今回の件はそういったオーケストラの事情を越えた《現実》が隠されているように思える。
それは、今回はお客さんが「減った」というより「いなかった」からだ。
 
つまり今回の超名曲プログラムが多くの聴き手にとって「興味のない」「知らない」ラインナップになってしまっている、という現実である。
吹奏楽に何が起こったのか。(たぶんまだ続けられそうー)

*1:ボクとしては、皆が酷評するほどの演奏ではありませんでした。むしろここ数回の定期の中でも悪くはない方です。木管群の繊細で変幻自在な表現は美しく、ボストックの音楽設計の面白さも存分に楽しめました。