乖離

尺八奏者の神永大輔さんがいうには、ヘヴィーメタルのバンドには通常よりもチューニングを低くする所があるそうです。これはオーディエンスが耳心地的に馴染んでいる音よりも若干チューニングを低くすることで、サウンドを重厚(ヘヴィー)に感じてもらうための裏技らしいのです。
ところがヘヴィメタ・バンドでも尺八奏者として活動している彼にとって、これは大変な仕事です。邦楽器というのはもともと高めにチューニングされており(A=442Hzが基準なのだそうだ)、チューニング用の抜き差し管がない尺八などは、たとえばA=338Hz(いちおう1939年にロンドンで行われた国際会議ではA=440Hzとされた。)に設定されたりすると、管楽器というのは温まると音程が上がりがちなので、どんどんギターやベースと乖離していく(弦楽器は弾けば弾くほど、弦が緩んでさらに音程が低くなりますから)わけです。
尺八には「メリ」や「カリ」という音程や音質の調整方法があるのですが、ずっと音程が低くなる「メリ」で演奏しなけれがならず、これまた本当にヘヴィです。
最近は管の先、つまりベルの穴の部分にセロテープを貼って少し塞ぐと音程が低くなることを発見したそうです。いろんな苦労があるなぁ。