モジャくん


いつの頃だったろう。ボクがデザインでお手伝いしたユーフォニアムやテューバのリサイタルやブラスアンサンブルの演奏会場に出向くと必ず現われる男の子がいました。その子は遠くから見てすぐわかる巨大なアフロヘアーに緑色のスタジアムジャンパーという、トニカク目立つ出立ちですので、一目だけでも覚えるというのに、どの会場に行っても必ずといって良いほど出現するのです。あんまりよく目にするので勝手にボクは〈モジャくん〉と名付けて「モジャくん、今日も来てる!」と心の中で呟いていました。
彼を見かねなくなって暫くして、管楽器専門誌《パイパーズ》のインタビュー記事のレイアウト依頼がありました。現在アメリカに留学中のユーフォニアム吹きがいて、けっこうアグレッシヴで面白い人だと。材料の文字原稿だけではピンと来なかったんだけど、写真を見てビックリ。あのモジャくんではないか!
彼の名前は安東京平*1。第4回韓国済州島ブラスコンペティションファイナリスト(韓国)、第24回日本管打楽器コンクールユーフォニアム部門第一位、第25回ファルコーニ国際ユーフォニアム・チューバ・コンペティション第一位。なんだかスゴいことになっていました。でもそのキャッチーな風体が忘れられないボクは何としても似顔絵を描きたい衝動に駆られ、畏れ多くもインタビューのビジュアルにイラストを描いて載せてしまいました。そのイラストが上の画像です。
しばらくして彼のfacebookを見つけました。何とプロフィール写真にボクの似顔絵を使っていてくれていました。とても嬉しかったのだけど、雑誌のイラストを携帯電話のカメラで撮った低画質なモノだったので、本人に連絡を入れてイラストのデータを差し上げる旨をお伝えするととても喜んで頂きました。現在は彼のブログのバックに使って頂いてます。
そんなこんながあってネット上での交流から始まって、本日のYAMAHA銀座での一時帰国リサイタルにご招待いただいたのですが、彼のしっかりした音楽への眼差し、豊かな息から繰り出される強いトーンとフレーズ感、高音でも低音でも確実に制御されるリップ・コントロールは見事でした。彼の努力と熱意の賜物だなぁと何だか胸が熱くなりました。
日本に戻ってきた際には必ず一緒に仕事をしましょうと堅く握手を交わし、帰路につきました。
その後、自宅の最寄り駅に降り立ったところでご近所サックス奏者の國末貞仁くんにばったりと出会いました。彼も仕事の帰りだったのですが、今日の話をしたところ、彼は最近に安東さんバンド指導のお仕事を一緒にしたばかりで、大変気がつくし人なつこい好感の持てる人物だと褒めていいました。この話もなんだか自分の事の様に嬉しくて、日本に帰ってきても、また世界のどこにいても、もっと彼が活躍する姿を早く見たい&聴きたいと思ったのでした。

*1:山東京伝みたいな名前だな、と勝手に思った