the starting point

アンコールの「G線上のアリア」の最後の音色が、スゥーッと客席上の空間に溶けていくのを、ボクの耳が最後の最後まで追いかける。すっかり消え入ると割れんばかりの拍手。満面の笑みを浮かべる須川展也さん。それを嬉しそうに見つめるピアノの小柳美奈子さん・・・
須川さん曰く「なんとなく、細〜く、長〜く続けていきたい」小柳さん曰く「みんなが、おじいちゃんおばあちゃんになっても続けてたい」、お二人曰く「私たちが初心に返る場所」である《第23回サクソフォーン発表会》に今年も行ってきました。
この発表会は須川さんが23年前に、アマチュア門下生*1と始めたソロの発表会ですが、今では門下生がそれぞれの活動を通じて仲間になったサクソフォーン以外のアマチュア演奏家の方々も参加されています。今ではソロ以外にデュオやアンサンブルも披露されます。
3部構成の最後のステージには、須川さんや小柳さん、彼らの仲間や直弟子の方々も出演し、無料の公演にも関わらず、大変豪華な顔ぶれが並びます。今年は須川さんと小柳さんは勿論、新井靖志さんや、Torio YaS-375(小柳美奈子pf/山田忠臣as/國末貞仁as)も出演されました。
ボクやemixは、色々ご縁がありまして、ここ数年打ち上げにまでお邪魔させていただいております。温かなこの集まりが大変心地よく、毎年お盆に家族全員が集まるかのように、この日を楽しみにしています。
須川さんとボクの関わりというのも随分長いのですが、ボクにとっての須川さんの「G線上のアリア」は、この後のボクの人生を決定づける一つの大きな大きな思い出があります。
今から25年くらい前、四国の田舎で朴訥な吹奏楽少年だったボクは、友人に誘われ夏に行われた小豆島のミュージックキャンプに参加しました。そこでは中日にミュージックキャンプの講師陣によるコンサートがありました。その当時、サクソフォーンの講師をされていたのが若き須川展也さんで、彼はそのコンサートで他の講師の方々などと一緒にカルテットを演奏しました。その第1曲めがこの「G線上のアリア」でした。
ボクはトロンボーン吹きにも関われず、そのサクソフォーンの音色に(当時は弦楽合奏以上だ!と思っておりました)完全にのぼせ上がり、(多分そんなことをしてはいけなかったのだと今となっては思いますが)友人がカゲ録してくれたテープを何度も何度も繰り返して聴いたものです(しかもそのテープ、まだウチにあります)。ボクにとっての須川さんは誰よりも憧れの人となりました。
当時からボクの中でトップスターだった須川さんですが、今思うとキャリアとしては駆け出しで、丁度、この《サクソフォーン発表会》をアマチュア門下生と始めるかどうかくらいの頃だったんですね。しかし、その後の須川さんのご活躍は皆さんもご存知の通りで、世界的なサクソフォニストとして活躍されていきます。
須川さんといつか一緒に仕事が出来る様な仕事につきたい。そんな一心でここまで来たと思います。それがボクは音楽ではないところがちょっと変わってますけどね。
その後、ボクは須川さんとは多くの仕事を通じて親しくさせていただき、奥様の美奈子さんともアルバム制作をご一緒させていただけました。そして、埼玉大学吹奏楽部出身である誼(よしみ)で、先輩方から誘われてこの会に足を運ぶようになり、去年、須川さんの弟子でボクの後輩でもある國末貞仁くんと出会い、「アルバム作ろうぜ」といった話が今年実現しています。本当に夢の様です。
今日、そのボクの原点とも言える須川さんの「G線上のアリア」をアンコールで聴くことが出来て改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。須川さんともお酒の席でお話しましたが、人の縁というのは本当に不思議です。ボクにとっては25年前から、この日のアンコールが決定されていたかのような、そんな気持ちです。
で、打ち上げはですね、結局終電がなくなっても、須川さんを筆頭に皆で飲んだくれていたのですが、そのとき話題に上ったエピソードの数々はまた後日〜。

*1:須川さんが大学出立ての頃に東京大学や埼玉大学などの吹奏楽部のパート・トレーナーをしていた時期がありました。その頃の門下生です。現在はアマチュアの門下生は採っておりません