超一流の条件

『超一流のアーティストって何でもないことをサラッと演っているように見せるんだけど、よくよく考えたら誰も真似できない事やってるのよね〜。何にもストレスを感じないって実はスゴイことよね』とは東京オペラシティ文化財団のK女史の今日のお言葉である。
では、どういうところが常人には真似出来ないのか。
彼ら・彼女たちのスゴいところは、愚直なまでに基本に忠実な事だ。“自分流”という名目で変にいじくり回したり端折ったりしない、というところだ。安直なオレ流は殆どの場合クリエィティヴではないことを知っているのだ。
先日もとある超一流演奏家のCD(ラ・プティット・バンドのこれ)を聴いていて、「!、楽譜と違うこと演奏してないか?」とスコアを確認したらテンポは勿論のこと、音価の一つ一つまで忠実に演奏していた。我々の方が「何となくのお約束事」に縛られていて、ちゃんと楽譜を見ていないのだ。
そういったトコトン基本に忠実にブレない地道な作業が、実に鮮度の高い音楽を紡ぎ出していく。内田光子然り、ジギスヴァルト・クイケン然り、パーヴォ・ヤルヴィ然り。
こういう所をボクたちみたいな凡人は端折ってしまう。朝一番に毎日しなければならない体操を面倒くさがる。近道に見える霧の中を漫然と進んで途中で諦めてしまう。ドラスティックに事が一変できる秘策を夢想してしまう。駄目だ駄目だ。それでは駄目なのだ。
丁寧に地味に面倒くさい道を好き好んで一歩一歩進んだその先にこそ、誰も到達し得ない、しかし誰もが共感してくれる孤高の表現がある。
デザインも何ら音楽と変わらない。ボクもそれを目指していきたい。
(もちろん音楽もだよ〜)