間違えやすいこと。

テューバ奏者の橋本晋哉さんのツィートをきっかけに彼とやりとりして知ったんだけど、JASRACの2011年4月8日のプレスリリース「東日本大震災の被災者支援及び被災地復興のためのチャリティーコンサート等のお取扱いについて」。
ここに内容を転載しますね。

2011年4月8日 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)
東日本大震災の被災者支援及び被災地復興のための
チャリティーコンサート等のお取扱いについて
 
3月11日に発生いたしました東日本大震災により被災された皆さまに、心からお見舞いを申し上げます。そして、被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
JASRACは、東日本大震災の被災者の支援、及び被災地の復興を目的として以下の範囲で開催するチャリティーコンサート等に関して、無償で許諾することといたしました。
【無償で許諾する範囲】
2011年3月11日以降に開催される催物のうち、以下の事項を満たす著作物の演奏利用、及び当該催物に付随するプログラム、チラシ等の出版利用が無償許諾の対象となります。
【必要事項】
1. 入場料として得た収入を全額寄付していただく必要があります。
 (会場費など、チャリティーコンサート等を開催するために必要な経費は除きます。)
2. 全額寄付という趣旨から、参加する出演者は報酬を受けられません。

3. 寄付先は、義援金等を管理する地方自治体や日本赤十字社等、被災地支援及び被災地の復興という目的に適っている団体であることが必要となります。

4. あらかじめ「利用許諾申請書」に「無償許諾申込書」を添付して、所定の手続きを済ませてください。

5. 寄付を行った後、速やかに収支決算書、経費の領収書、及び寄付先の領収書を提出してください。
6. チャリティーコンサート等用にプログラム等を作成する時には、JASRACからの無償許諾を得ていると掲載してください。
※そのほか、詳しいお問い合わせについては、手続きの窓口である各支部にご連絡ください。
以上

これ一見、チャリティコンサートを開こうかと思っているアマチュア吹奏楽団の人などにとっては「お〜!」な感じですよね。これで安上がりにチャリティコンサートできるじゃん、と。
ところがコレ、よくよく考えて見ると(以下、橋本さん談)「本来の権利者である作曲家たちに問答無用で無償を強要し*1」「表面の賞賛は自分達が受け取ろう*2」「手間暇は主催者ヨロシクっていうこと*3」なのです。
つまりこれはタトエとして(これはotoshimono談)「おにぎりを勝手に被災者に配ったコンビニが食品加工会社に『支援物資として配ったから代金は払えない、けど送ったのはオイラたちの手柄』って言っているのと一緒*4」な訳です。ちょっとヘンですね。
作曲者が自ら(または版元などと協議して)「自分の著作権料を寄付します」とかは、良いと思いますよ*5。食品加工会社自体が「加工したおにぎりを支援物資として被災地にお送りします」は良いんです。
でも、中間でお金や物の管理をしているところが勝手にそこを決めちゃイカンでしょう。
でも、こういう間違いって起こりやすいんです。
先日も、とあるアマチュア吹奏楽団の演奏会が震災の影響で取りやめになって、ちょっとデザインの仕事を受けていたもので、幹部の方々の相談の場に居合わせた時に「せっかく負担金集めたんだし、これを義援金にして被災地に送ろうか」みたいな話になりかけて、全力で止めたことがあります。
集めたお金を本来の目的とは違う使い方をするときに、それを預かる人は、その場の雰囲気に呑まれてはいけません。これは震災だろうが何だろうが同じ事。トラブルの元です。

*1:つまり利用者から著作権料を取らないからと言って、作曲家に使用料を肩代わりしてJASRACが支払う訳ではなさそうです。とある作曲家さんに聞いたところ、契約上、著作者は一切の権利をJASRACに譲渡しているので、不条理に感じた事項に対して異議申し立ては出来ても、一旦は従わざるを得ないそうです。

*2:『チャリティーコンサート等用にプログラム等を作成する時には、JASRACからの無償許諾を得ていると掲載してください』の部分

*3:これに伴う手続き云々は自分たちで速やかにやってね、的な部分

*4:実際のコンビニの業者間の支払いのしくみは今は無視してください

*5:これもJASRACは行っているようです。会員・信託者から義援金寄付や著作権料の一部を義援金に充てられる仕組みを作ったそうです。詳しくはこちら