エール


侍BRASSのオペラシティ公演のデザインを初回より担当させていただいてる。そんな関係で今年も事務局よりお誘いを受けて演奏会にお伺いした。昨年気になった演奏の不安定さもなく、実にガッツリとした仕上がり。特に中川英二郎さんの楽曲と、ソロからトリオまでの編成で書かれたニューアルバム収録の楽曲は音楽的にもイージーではなく秀逸で、彼らの音楽家としての高さを鑑賞することが出来て素晴らしかった(アルバム収録のテイクも後ほど聴いたが実際ブラビッシモである)。まさに侍十勇士のコンセプトに恥じない。
ただ惜しむべきは、今回も中川さん意外のオクテットの新曲のラインナップが、どうしてもコンテストピースとして譜面をスクールバンドなどに提供することを意識しすぎているのか、イージーでエデュケーショナル風味な楽曲になってしまっていて、日本屈指のブラスアンサンブルという意味での侍BRASSの持ち味が生かされていないところだ。
PJBEやカナディアンブラス、エンパイアブラスなどの「アルバムありき」で演奏と楽曲の素晴らしさに惹かれ、憧れからアマチュアでブラスアンサンブルを始め、無い譜面を血眼になって探しまわったり(あくまで個人や仲間と楽しむためだけに採譜したり)、手に入っても全然上手く演奏出来なくて苦しみ続けたボクとしては、確かにアルバム発売やコンサート初演と同時に演奏しやすい楽譜も販売されているのは羨ましくと思うが、受け手サイドに寄り過ぎるとそういった「憧れ」というか「のどの渇き」を削いでしまうのではないかと少し懸念してしまう。
ファーストアルバムの頃はまだ楽団としてのプロモーションコンセプトがハッキリしていなかったためか様々な音楽的手法が混在していた。特にジム・ピューさんやエリック・ミヤシロさんが提供した楽曲は、当時世界中で話題になっていたマイク・デイビスのプロジェクトで実現されていた「アメリカ東海岸と西海岸が融合したブラスサウンド」を彷彿とさせるモノがあり、とてもワクワクしたことを思い出している。2nd以降はそういったカラーを外す方向で動いていたので、マニアとしてはちょっと残念なところだったのだ。
しかしニューアルバムの小編成楽曲は、お馴染みの邦人作曲家陣ながらファーストの匂いや連綿たる海外のトップアンサンブルにひけをとらない音楽的仕上がりであり、不才なボクが言うものオカシな話ではあるが「やれば出来んじゃん!」と声を上げてしまった。
こういう質の高い音楽作りを視野に入れた侍を今後も聴きたい。
デビューから実務とファンとして応援し続けているボクからのエールだ。
最後に余談「ニューアルバムの残り4トラックはボーナスと解釈すればいいんですよね?」

侍十勇士

侍十勇士