音楽三昧二日目


レニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)による《白鳥の湖》公演へ。恥ずかしながらバレエ鑑賞はこれが二回目。一回目も牧阿佐美バレエ団《胡桃割人形》なので、バレエ鑑賞者としては殆どド素人の領域なのだが、舞台芸術に関わる仕事をしているのだから当然見識を広めるべきであり、今回の公演鑑賞を勧めてくれた友人に感謝している。
今回の公演はプティパ/イワノフ原振付版を元にしたゴルスキー=アサフ・メッセレル版という王道ともいうべきスタンダードな演出。バレエのイロハが存分に楽しめる内容だった。やはりハクチョウコはキング・オブ・バレエである。
白鳥の湖は学校でも習ったり子供の頃から何度も演奏を聴いているし、映像作品や果てはグランディーバ・バレエ団や志村けんのパロディまで、とてもよく知っている作品だと思っていた。しかし、やはり群像での動きの立体感やソロの躍動感、またソロやペアなどで舞っている後ろでの細かい演出、舞台装置の工夫、音楽の流れ、オーケストラピットの頑張りなどは、実物を体感しないことには身体に染み込んでこない。恐ろしいのは、観てもないのに観た気になっていた自分の思い込みであると実感した。
特に最近、舞台や映画、コミックなどで取沙汰されるオディール(オデットと一人二役)という力強さ官能と悲哀に満ちた役どころは、本公演のようなスタンダードな舞台を目撃しているか否かで鑑賞者としての深みも全く変わる。
豊穣な文化というのは、どれだけ人々が共有出来る「お約束」が多いか、ということである。仕事で関わってる方は勿論、自分が趣味で音楽や舞台や美術に触れているのであれば、やはり学校で習った作品や演目ぐらいはライヴで体感しておくべきなのだ。