近代〈日本意識〉の成立

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学生時代、人類学をかじっていたこともあり、民俗学や人類学の本の装丁をするのが好きです。この学問は微に入り細を穿ち、本当に地味な作業の積み重ねながら、もっとも原初的な《違和感〜問い》に挑むことが多いのです。
即ち、この本だと「日本人」「日本民族」「日本文化」とは何か・・・。
「そんなん決まってんじゃん、日本古来から続く連綿とした礼節を持った武士道とワビサビの文化こそ」なんて考えちゃったあなた、もうそれじゃ民俗学・人類学じゃないんですね。
上のフレーズ、一見もっともらしいことを言ってるようでイチイチ危うい。〈日本古来〉っていつからって文献あんの? 〈礼節を持った武士道〉って何? 〈ワビサビの文化〉も武士の文化だと思うんだけど、そもそもこういう事をいつから庶民が感じてたという文献はどこにあんのさ? だいたいさ、17世紀まで長く群雄割拠し、その後も幕藩体制だったこのマトマリが古来からどこからどこまでの範囲を《ワレワレ》なんて考えてたのさってなことです。そして、そんなマトマリが明治という時代から昭和に至り、みるみるうちに国家としてニッポンジンという意識を持ち、〈大東亜共栄圏〉なんていう概念に発展させて自分たちの意識規模を拡大させ、戦争に向かい、敗戦後はシュルシュルと小さな島国の単一民族国家(時々この言い方で政治家が暴言を吐いちゃぁ謝ってますね)という意識まで縮まっちゃったりしたわけです・・・。不思議じゃない?
その違和感を感じたときがこの学問のスタートなんです。
この本は、主に昭和前半の文化論等に焦点を当てながらこの問いを解き明かしていきます。かなり難しい本ですが、そもそも論が好きな方、是非ご一読を。
ちなみに装丁のカバーのビジュアルで使った地図は1933年当時の大東亜共栄圏構想の地図、扉には1914年のまだ満州が誕生していない頃の地図を使用しています。