刃物


東京オペラシティ ニューイヤー・ジャズ・コンサート2014 山下洋輔プロデュース・ファイナル《ジャズのもう一つの夜明け》に伺う。
山下洋輔さんのオペラシティで毎年恒例となっていたニューイヤーコンサートも今回もひと区切りということ。私も2005年からほぼ毎年、このお仕事に携わらせて頂いてたので、かなり寂しい気もする。
とはいえ、最後の最後で山下さんは彼のイズムを受け継ぐ次世代のジャズを背負って立つ4名を世に送り出す舞台を創り上げた。しかもこれは山下さんにとっての隠居宣言ではなく「コイツらと丁々発止やっていくゼ」という決意表明に見えた。
その4名とは郄橋信之介(D)、挟間美帆(P & Comp)、スガダイロー(P)、寺久保エレナ(TS)。
その他の共演者として中村健吾(B)、池田篤(AS)、MIYA(Fl)、はたけやま裕(Per)、真部裕(Vn)、沖増菜摘(Vn)、吉田篤貴(Vla)、島津由美(Vc)。
第一級の才能や表現が共鳴し合い、爆発する瞬間に立ち会うというのは実に感動的だしエキサイトである。
と、同時に自分に「おまえにはそれが出来ているか、その覚悟はあるか」とキレッキレの刃物を突きつけられる迫力と恐怖に満ちている。
自分は年齢としては丁度彼らと山下さんの間くらいである。ある意味ベテラン真っただ中。音楽とデザイン、ジャンルは違えども表現する仕事としての引き出しや手の内はある程度持っていて、それのみを使い回しても「食っては」いける。
でも、そんなんでいいのか・・・
駆け出しの頃は師匠を見て、ベテランとしての力みの無さと軽やかさに憧れた。しかし、気がついてみれば自分はその辺りにはいる。だが、その先は途方もない。余裕なんてぶっこいていられない。ここでまた力まないとすぐに錆びてしまう。思い返せば師匠もそうだったのだと思う。飄々としていながら力のある人にはいつも挑戦的だった。
先に行きたい、先に行きたい・・・もっと先に行きたい。
今なお全力の山下洋輔を観て、今なお自分を追い込む山下洋輔を聴いて・・・夜明け前の成層圏を行く飛行機のように、静かに熱意をもって翼を広げて遠く先に光る陽を目指さねばならぬ・・・そう思った。