ピアノ


ピアニストというのは往々にして、現場にあるピアノで仕事をするので、メーカーなどの好みはあれど、気の合う調律師に頼んでチューンナップは出来るにしても、管楽器奏者の様に自分好みにカスタマイズした楽器を持ち歩く事は出来ません。
とはいえ、自宅にある(殆どの方は練習用でしょうが)ピアノとなると話は変わる様で、(勿論色んな現場で対応が出来るようにニュートラルな仕様にしておく方も沢山おられるでしょうが)メーカーや品番、部品の微に入り細に至るまで拘りぬかれたり、また、 日々部品を交換して実験を重ねしながら自分の求める音色を研究される方もいらっしゃる様です。
ピアノを打鍵した時に、どこが鳴るのか、どこを鳴らせたいのか、どう鳴らせたいのか・・・ ピアノというのは大まかにいうと、1:鍵盤を押し下げると、2:同時に連動して該当する音の弦からダンパー(響き止め)が離れ、3:テコの原理でハンマーが跳ねて下から(アップライトの場合は横から)弦を叩いて振動させ、4:振動が駒(ブリッジ)から響板に伝わり、5:空気振動になって人間の耳に入ります。
この仕組みをイメージして弾いているのか、イメージせずに弾いているのかで、ピアノのタッチが全く変わるそうです。
つまりいくら鍵盤を強くぶっ叩いたところで本当に響く大きな音が出る訳ではないということ。あるピアニストによると、小さなアクションでも響板を鳴らすイメージで弾けば、十分響きのある音色が得られるのだそうです。
また、そのピアノメーカーが、演奏家に対して何をサポートしているのか、も、大きな音色の違いになります。腕前に応じて音色が機敏に反応するピアノ、それほど腕前がなくても「それっぽい」音が出てしまうピアノ、大きなコンサートホールでよく響く様に設計されたピアノ、逆に小さなホールやリビングで心地よいサウンドに響くピアノ、現代音楽などで多用されるプリペアド奏法に適した頑丈なピアノ、まるで昔のフォルテピアノの様な繊細なピアノ、等々。
音楽や楽器は門外漢という方でも、クルマやバイク、デジカメ、スポーツで使う道具などをイメージしていただけるとよく解る話だと思います。