《伝える》技術

友人や家族との普段の会話でも、恋愛でも、仕事の打ち合わせやプレゼンでも、メールのやりとりでも、音楽や演技、もちろんデザインの上でも、ミス・トラブルの発端は《伝える》側の技術に問題がある場合が多いです。
もちろんその人の「気持ち」「熱意」は一番大きなファクターですが、伝えたい情報の精査や、出すタイミングや量、見せ方や聞かせ方、それぞれの総合力が大事なんであって、どれかを端折ると途端にチグハグになってしまうケースを本当によく見かけます。
例えばSNSなどで、グラスに注いだビールの写真が貼ってあって「子供がキャンプで、飲んでます」と書かれていたとします。
まともに読んだらギョッとします。「子供がキャンプ場でお酒を飲んでいる」という情報として伝わるからです。
ところがこれがママ友のコミュニティだけで交わされているのであれば、全く違う情報になります。前提条件として書かれていない情報が多分にあるからです。
つまりこうなります。「子供が(子供会の行事の)キャンプ(に出かけているの)で、(私は普段追われている子育てから開放されて、居酒屋などでビールを楽しく)飲んでいます」
括弧内は共通認識だから言葉に出して語ることのない部分なので省略されてしまっているわけです。ところが普段、ママ友のコミュニティだけで暫く暮らしていると、そうでないコミュニティの境界面を忘れてしまいがちです。つまり、情報を受ける(聞く)側にキチンと立たないと、何が足らないから情報や思いが伝わらないのかがわからなくなる訳です。結果、ママ友だけでない、昔の友人や元勤め先の同僚とも繋がっているSNSのコミュニティでも「子供がキャンプで、飲んでます」というチグハグな情報を出してしまうことになります。
つまり、括弧部分を補わないのであれば、それはママ友の中で話す(業界内の)会話であって、SNSでのママ友以外の友人知人たちに出す情報ではないのです。
これはママ友に限らず、学生のサークル、教師などの職能集団等にドップリ浸かっている人が、他のコミュニティの境界面で犯してしまいがちなミスです。
敏感な受けて(聞き手)であれば、自分が発話者のコミュニティにいなくても括弧部分を補うことは出来ますが、友人の情報伝達能力に疑問を持ってしまうことになります。
伝える技術の根本ってきっと「人の話をよく聞く(読む)」事なんだろうと。上手く伝えられる人ってやっぱり聞き上手なんですよね。まず情報をインプットする部分を端折らないのだと思います。これは巧く立ち回るとか要領が良いとかそういうことではなく、もっと真摯で真面目な態度の問題です。そして自分がアウトプットするときは、たえず、どう話せば(書けば)よりキチンと伝わるか考えながら行動するわけです。
《伝える》って技術なんだよなぁとつくづく思い知らされます。