「懐かしい」考

「懐かしい」っていう感想や発言って極めてパーソナルな体験に基づく感情から湧き出るものだから仕方ないといえば仕方なんだけど、相手に対して不用意に言ったり書いたりすると傷つくことがあるから結構気をつけた方が良いと思う。
例えば、あるミュージシャンが「新曲出します!」っていう発表をSNSでしたとする。その方はずっとミュージシャンをされていて、久しぶりに新曲を出したわけでもしばらく活動を休んでいたわけでもない、とする。
ところが、そのコメント欄に「懐かしい!」ってコメント書き込みが入っていたらどうだろう。
コメント投稿者にとってみれば、青春の一時期に入れ込んだミュージシャンで、その方にとって良い思い出なのかもしれない。しかしこのコメント書き込みによってミュージシャンは「過去の人」のレッテルを貼られてしまう。
しかもSNSのコメントの多くは他の方にも読まれたり、拡散されたりする。パーソナルな感情も一般論として拡散されてしまうのがSNSの怖いところである。
ミュージシャンからすると、ずっと積み上げてきての今の活動があるのに「懐かしい」の一言でそれを否定されてしまったかのように思えてしまう。
コメント投稿者は不用意に「良い思い出」として投稿したものでもミュージシャンの活動には不利益な発言になってしまうこともあるのだ。
本人は「ありがとうございます。新曲もお願いします!」って返信コメントなどを入れるかもしれないが、実際は結構傷付いているものだ。
ある物事にふれて懐かしさを感じることは誰にでもあるし、その思いを吐露したいこともある。しかし吐露する場所と時と相手をキチンと考えないとお互いにとって不本意な結果になってしまうこともある、ということだ。