母のコレクションより

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『講談社・少年少女世界文学全集(昭和36年の初版全巻)』。

 

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背に羊皮を使い、箔押しと空押しを丁寧に使い分け、装画はカラー印刷をシールにして貼っているという、息を飲む美しい装丁は、絵本や紙芝居の画家・版画家としても名高い池田仙三郎によるもの。

 

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テニエルの影響を受けつつも独自の洒脱なタッチで描かれたアリスの装画は日本のグラフィックデザイナーの草分け的存在である熊田千佳暮(熊田五郎)。

 

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監修には志賀直哉や小川未明など錚々たる顔ぶれ。
子供の頃から家に当たり前のようにあったけど、もうこんな美しい文学全集は二度と作れないでしょう。

 

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続いて『平凡社・世界名作全集(昭和37年初版全巻)。

 

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文庫サイズながらシンプルなのに雰囲気抜群の装丁は原弘!

 

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監修には川端康成・壺井栄・中島健蔵・三島由紀夫・山本健吉ってエェッ!? もう奇跡としか言いようのない全集。


先の講談社の全集もこの平凡社の全集も、母は父親(つまり僕の祖父)から高校の頃にプレゼントされたのだそうだ。祖父はいつも祖母が忙しく働いている大衆食堂の休憩室でゴロゴロして本ばかり読んでいる寡黙な人の印象しかなかったが、神戸大学を出て戦前は陸軍士官を務めた秀才だったというのは、随分後になって知った。

思い返せば本に囲まれて育った。僕がブックデザイナーになったのは、殆ど話を交わしたことのない祖父の思いの延長線上なのだと、今日ようやく気付いた。