民族ブラスバンドとしての野球応援

永遠に好きではなかったアフリカン・シンフォニー(吹奏楽版)が各地の野球応援版を聴いてるうちに愛おしくなってきた。旋律主体のシンプルなブラス+太鼓+チャントから生み出される独特な高揚感は民族ブラスバンドとして昇華されている。

よくよく考えてみたら野球応援における吹奏楽演奏は、その諸元であるトルコ軍楽の姿によく似ている。すなわち太鼓と管楽器とチャントによる敵陣への威嚇と自陣への鼓舞。実際、野球応援のドン・ドン・ドンドンドンのリズムはトルコ軍楽そのもの。

(モーツァルトがピアノソナタ第11番 イ長調「トルコ行進曲付き(第3楽章)」で使ってるリズムだよね(特にBメロ)。)

僕の考える吹奏楽は「モバイル性(屋内外で演奏できるし、足で移動できるところなら何処でも行ける)」「アンプラグド(基本電気要らん)」「少人数でも音が割とデカい」「雑多なレパートリー」が長所だと捉えていて、野球応援にこれほど適した楽団はないわけです。

そして日本において吹奏楽の一番のメジャーな活躍の場は野球応援だし、一般の人でも一緒に楽しめる(応援に参加できる)という大衆性、ハレの日を盛り上げる祝祭性、誰でも口ずさめるレパートリー群とサウンド感という意味においても、世界に数多ある民族ブラスバンドの特徴を既に兼ね備えている。

なので日本の野球応援のブラバンは、アメリカのディキシーランドブラス、メキシコのバンダ、東欧のジプシーブラスバンド、ドイツ・オーストリアのビアホールバンド、スペイン・カタルーニャのコブラなんかと肩を並べるものなのではと思うのです。