ばぁちゃんの家

「これってこの前行ったとこ?」
写真を整理していたemixがそう言って一枚差し出す。
海沿いのばぁちゃんの家の前で撮った古い写真。
子供のボクやばぁちゃんや家族が写ってる。
「そうそう、おんなじとこだ」
この夏、広島に帰省したとき家の軽自動車を借りて、ついつい来てしまったのだ。
 
ばぁちゃんはもう長いこと広島の市街地で暮らしている。
だからここはずっと放ったらかし。
でもボクには子供の頃の思い出が詰まった楽しい場所だ。
ここで弟やイトコたちと遊び宿題をやり、
夏はアイスを食べ、冬は凧揚げをした。
 
ボクは小学生ように堤防をよじ登り、周りを見渡してみた。
海の向こうには大きな橋が架かり、
新しい埋め立て地の倉庫や工場へトラックが行き交っていた。
「これじゃ、宇品港の花火大会は見えないなぁ・・・」
家が昔のまんまなだけに、
周りの変わりようを少し残念に思いながら堤防を降りた。
 
「西日本ってホント土が白いよねぇ」写真を見ながらemixがぽつりという*1
そうなんだ、それは今でも変わらない。当たり前のことだ。
けれど関東の赤黒い土で暮らす大人になったボクには、
古い写真に写ったばぁちゃんの家の前の土が、格別に白く見えた。

*1:地質学的には真砂土といって、花崗岩等が風化することによってできるそうです。中国地方は花崗岩や流紋岩を多く含む地質なため、火山灰系であるローム層が多い関東より土の色が随分明るく見えます。