遅ればせながら

計画停電を仕事の休憩時間に利用しながら

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

を読んでいる。
随分前から話題だったし、アニメ版も話題になったし*1、本当に随分遅ればせながらなんだけど。
ボクが左程際立った書評を書ける訳もなく、言い得て妙なことは既に多く語られているであろうが、同じメディアの送り手として感服するのは、基礎力の高さである。
創作の基本は真似ることから始まる。大好きな作家や作品を模写しまくり、自分の体内に消化する。次第に自分がそのスタイルを自在に操れるようになるまで。良い意味で贋作が作れるようになるまで。そうして始めて独自のスタイルを放出する準備が整うのだ。それが送り手の体力というか基礎力になる。
森見登美彦という人は、その部分が周到にされている人だ。彼が夏目漱石を消化しきっていることは文体のみならず、その諧謔と人物設定やテンポ感から見ても明らかで、その上で以降の文学の変遷も巧みにリスペクトしながら物語を紡ぎ出していく手法は、バッハの主題を用いて素晴らしいヴァリエーションを書いてみせたリストのようだ。
そんな堅苦しい理屈を抜きにして、ボク個人としては、国立大特有のビンボー臭さと、頭のイイ頭の悪さが懐かしくも感じられる。さらに停電を利用して読み進めてみよう。

*1:観てなかったけど、先ほど観ました。久々にちゃんとしたアニメーションに出会いました。