上京の母


母が友人に会いに広島から上京して来たので東京駅へ迎えに行く。友人と会うのは明日なので、今日はウチで一泊する。夕食までに何処に行きたいかと聞くと「とげぬき地蔵」と実に年相応な答えをしたので、家訓である《せっかくだから》の精神に則り巣鴨に向かった。
というか、実はボクも前々から行ってみたかった。年相応というのはウソですな。
で、実際行ってみないと分からなかったコトってよくあるものだ。とげぬき地蔵のある寺(高岩寺)は門前通りにある商店街をずっと行った突き当たりにあるとばかり思っていたのだが、まずこれが全く違った。寺は通りの中程にあって、しかも商店街の人通りの割に寺に入っていく人も少ない。善光寺みたいに寺に近付くにつれ人がごった返しているとばかり思っていたので、一旦通り過ぎてしまったくらいだ。
で、肝心のとげぬき地蔵は秘仏の本尊で普段見られるものではないらしい。有名な水でジャブジャブ洗ってるのは「洗い観音」という聖観音像。てっきりこれがとげぬき地蔵だと思ってた。しかも撫でられすぎてトロトロになっているとのを想像していたら、もう20年以上前に取り替えられててクッキリとした観音様だった。テレビで見た事あったのだが、それさえ昔の情報だった。
やはり見聞きした情報だけで判断するのはやっぱりダメだ。実際体験しないと。これからも《せっかくだから》の家訓をしっかり守って生きて行きたい。

夕食は茨城に住む弟を無理矢理呼びつけて浦和で鰻を喰らう。中浦和は別所沼の近くにある萬店。浦和は鰻の蒲焼き発祥の地というのが自慢だ。名前に「浦」がついているくらいだから、逆にいうと鰻や鯰や鯉みたいな魚しか穫れなかったので、それを焼いて中山道の旅客に出していたのだろう。あっさりした味付けで好感が持てる。今は開発されて沼地は周辺に殆どないのでさすがに地物ではないと思うが、地元の名店として長年培って来た味だということは分かる。今日は季節柄かお客も多い。
父母が先月行って来たスペイン旅行の話などをしながら過ごした。
家族なので他愛もない話しかしないのだが、ボクは高校2年以来ずっと家族と離れて暮らしてきたので、こういう時間は大切にしたい。