らしさ

うちのボスの名言で
「自分らしさを出すな」というのがある。
一見今の世の中で言われている真逆だ。でもこういうことなのだ。
「自分らしさ」とは出そう出そうとして出るものではなく、どんなに隠しても「出ちゃう」ものである。出そう出そうとしている「らしさ」なんて、もうその時点でママゴト、虚飾以外の何物でもない(ボスはそういう仕事を「おデザイン」という。うちはデザイン屋だから)。徹底的に削ぎ落とした先に「どうしても残っちゃう」のが個性なのだ、と。
だから、与えられた命題(仕事や役割、ボクらの場合はデザイン)は「世の中にどう当たり前に《佇まっている》べきか」をあらゆる角度から検討すべきであり、「自分だったら」などと考えたところで「考え事を考えている」無駄なルーチン・ワークに陥るだけだ、と。
これは言い得て妙である。常人の個性の在り方について、逆説的な言い回しで真意を突いている。
『本当に大切なことは自分の心の中にあるんだよ』なんて言い回しの方がよっぽど不親切に見えてくる。