「無理しないこと、かな。」

そういえば、仕事で尺八の藤原道山さんとご一緒したときのこと。
昼にロケ弁食べながらスタッフ全員で談笑してたとき、誰かが「健康の秘訣って何ですか?」っていう質問を道山さんにして、少し考えて「無理しないこと、かな。」と答えられました。邦楽界きってのスターだし、超多忙な身ですので、すっかり自分を追い込むタイプだとみんなは考えていたのでしょう、意外な答えだという空気が一瞬流れました。
それから間をおいて、「無理というか、無茶をしない。これ以上やると壊れる、と思ったら深追いせず、休むようにしています」と続けられました。
表現者というのは、自己をわざとストレスとプレッシャーにさらして能力を引き揚げていく作業をします。丁度フリーダイビングをするようなものです。フリーダイビングは素潜りでの深さを競うスポーツですから、常に自己管理の甘さが死に直結します。無理・無茶は禁物です。
彼が挑む限界は常人のそれとはレベルが全く違うのですが、それでもそれぞれ個人の能力に応じて適用出来る話です。
今の時代、ますます個人のストレスやプレッシャーに対してサポートしてくれる社会の範囲というか了見が狭くなってきている様に思います。自己管理術の重要さが益々語られています。
「まず健やかであること」これが今の時代、才能を発揮させる条件だと思います。道山さんの強い眼差しと音色を間近に感じる程にそう思いました。