信頼

人と人って日々の小さな信頼の積み重ねでしか分かり合うことが出来ない。その「小さな信頼の積み重ね」というのも個性であり、細やかな心遣いの中に現われる場合もあれば、一見ぶっきらぼうな振る舞いの中に几帳面さと優しさが見えることもあるし、達成出来ない業績でも真摯な姿勢と努力が現われることもある。皆形は違って当然である。しかしいずれにしても大事なのは前向きな心であり、「人のために何かしてあげたい」と思う心である。
人というのは知らず知らずのうちに保身や怠惰に走るし、それを人から隠すための言い訳をしてしまう。気を抜くとそれを自分で正当化するための新たな言い訳をしてしまう。それが続くと負の積み重ねの始まり。でもそれでは自分という存在が、自分の中でどんどん大きくなり苦しくなるばかりだ。そして知らないうちに人は離れていく。気付いたとしても、手からこぼれ落ちる人からの信頼をどんなに握りしめたところで掴む事は出来ない。やがて自尊と諦めが混ざった心は人を信じる事が出来なくなり、その精神は内に引き籠ってしまう。自分から人を避けてしまうようになる。でもそれは最初の小さな言い訳から始まっている。
どこからの時点でも良い。気付いたら少しずつ、他人だけでなく自分に対しても(こちらの方が大事)言い訳を止める努力をし、少しでも「人のために何かをする」心がけをすることだ。どんなにマイナスから始めても積み重ねていくことが大事、というか積み重ねでしか人の信頼や運を回復することは出来ない。小さい日々の成果は目に見えないが、黙々と続けばやがてそれは形を成す。気付いたら景色が良くなっている。
闇の底で人から手を差し伸べてもらえる事もあるだろうが、まずは見上げなければ差し伸べられる手さえ見つける事が出来ない。それに結局は自分が気付いて這い上がらなければならないし、這い上がるべき本人に替わってやる事だけは皆は出来ない。その境遇を誰かのせいだと思っていたり、諦めているのであれば、まずそれが自分への言い訳だ。
「人のために何かをする」積み重ねだけが信頼と運の高みに登っていく唯一の方法である。