ボーッとした高校生活

ここ最近の名門スクールバンドと言われるところは、吹奏楽コンクールで全国大会常連であることだけでなく、マーチングでも強豪、野球部も強豪で甲子園球場のスタンドにも姿を現し、自主公演では豪華ゲストと委嘱作品とパフォーマンス仕立てで盛り上がり、普段でも週二回のペースで演奏機会があり、テレビ番組やCMや有名アーティストのコンサートに呼ばれ、海外遠征をし、雑誌や書籍にて度々取り上げられる、が当たり前になってきている。なおかつ部員である条件には勉強もある程度の成績を求められるところも少なくなく、一瞬の暇もなく無駄なく過ごしている。彼らには、ぼーっとした高校生活とは無縁なのだろうし、そういったマネジメントに徹する部活動顧問や学校関係者や保護者の熱量には舌を巻くばかりである。
成長盛りで体力も有り余っている年頃だから、そういう境遇と機会に恵まれるのであれば、そういう高校生活も悪くないと思うのだが、実はボーッとした高校生活も悪くはない。
学校がかったるくて授業をサボって港の桟橋で昼寝したり、部活動で先輩や友達と喧嘩してボイコットしてるのを別の友達がいさめに下宿に押しかけてきたり、自分はモテもしないし彼女の一人もいないのに友達の恋愛相談に乗ったり、夜更かしして漫画や楽譜ばかり描いて学校に遅刻した挙句授業中ずーっと寝てたりする様な、無駄ばかりの高校生活も割と楽しいし、将来そういうことが人生の役に立つことも結構ある。

しかしながら、そういうボーッとした高校生活に腹をたてる人もいる。大変な苦労をして勉学に励む人もいるし、学校に馴染めずストレスから不登校になる人もいれば病気になる人もいるし、ヤンチャなヤンキー生活を過ごす人もいる。勉学の機会なくとにかく働いて生活費を稼がなければならない人もいる。何かに打ち込むにしろ打ち込まないにしろ高校生活の少なくとも三年が保障されているというのはやはり贅沢な話である。

十代後半の過ごし方は千差万別でそこに良い悪いもないし、親や学校や社会の期待をいくら求められたところで知ったことではない。ただ、意識するしない問わず、自分の旅の地図はどこかのタイミングで自分で手に入れなければならない。十代後半というのは、そのヒントを得る重要な時期であることだけは確かなのかもしれない。