褒め上手

先日の大学の吹奏楽部の打ち上げの折、指揮者の小峰君が教えてくれたんだけど、劇作家の三谷幸喜さんがボクの制作した演奏会のフライヤを大変褒めて下さったそうだ。小峰くんは三谷さんと同じバーの常連で、マスターに頼んで店にフライヤを貼ってもらっていて、常連の芸能人たちもよく見ていたらしい。で、三谷さんと一緒になった時にそういった話になったそうだ。
「『写真や文字など要素が多く、一見まとまりにくいはずなのに、インパクトを保ちながらも上品さを失っていない』って褒めていただいたんですよ〜。」
嬉しそうに話す彼を見て、ボクは三谷さんの魅力の秘密をひとつ説き明かした気がした。
つまり、三谷さんは小峰くんを立てた、のだ。
三谷さんはご存知の通り、日本を代表する劇作家だ。彼の周りには和田誠さんを始め、超一流のグラフィックデザイナーがおり、素晴らしい作品を次々と世に送り出している。ボクみたいなデザイナーの仕事なんて良くても中の上だ。けれど、ボクの仕事を褒めてくれることによって、小峰くんが良い気分になれる。
芸能・芸術系の仕事をしている人にとって「素晴らしい人(やスタッフ)と一緒に仕事をされていますね」と言われることは最高の褒め言葉なのだ。
しかも三谷さんのポイントは『具体的に褒める』ことだ。細かい部分を褒めることで社交辞令的な雰囲気は消え、相手との関係性がぐっと近くなる。ボクを褒めることによって、小峰くんの仕事の正当性が裏付けられ、結果、小峰くんの自信アップにも繋がる。
三谷さんは褒め上手なのだ。だから彼と供にある人は一流の仕事が出来るのだ。でもこれは偽善的に出来ることではない。彼の正直で純粋な好奇心あってこそ、である。